【学びの時間】「生きる力」を身につける教育⑦ 発達障害が増える理由

『やりすぎ教育』(武田信子著 ポプラ新書)から、引き続き学びます。

 

前回は、子どもの居場所についてでした。

何でもやってみたいと思うのが子どもです。

そして、親に対してひみつを持ちたいのも子どもです。

秘密基地をつくったり、ちょっと危ないことをしたり、

かつては、戸外に、親や大人の目の届かない冒険の場所がありました。

私自身、裏山で、大小のけがをたくさんしながら育ちました。

しかし、最近は、いろんなところが整備され、きれいで安全になって、

子どもたちの隠れ家がなくなっています。

唯一、そんな隠れ家やひみつを持てるのが、メディア機器の中だということ、

そうなんだよなって思える内容でした。


著者は、さらに発達障害が増えている理由にも言及しています。

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発達障害の増加理由は、環境変化物質、メディア視聴、睡眠、

ストレスなどといろいろ推測されていますが、

私は、これら要因以外に。

近年の養育環境の変化も原因ではないかと推察しています。

 

人は生まれてきたときに、誰でもどこかに脆弱性を持っているものです。

それが、豊かな自然の中で育ち、適度な刺激を受けて、

周囲の人びととの対人関係の中で揉まれるうちに修正され、

社会の中で特に問題なく過ごせるようになったり、

逆に持ち味や強みになったりしてきます。

 

でも脆弱な部分がもともと顕著な場合や、

自然に補完がなされていくような養育環境に恵まれない場合、

脆弱性がそのまま、あるいは強化されて、

バランスを欠いた発達をせざるを得なくなります。

脆弱性を減じるような養育環境がなくなれば、

必然的に発達障害が増加することになるでしょう。

 

かつては、子どもの頃に「落ち着きのなさ」

「コミュニケーションの取りにくさ」を指摘されていた子どもたちも、

大半は大人になれば立派な仕事をするようになりました。

あるいはそのまま大人になったとしても、

「地域コミュニティ」は、

そういう子どもや大人を含めた多彩なメンバーで支え合って

共同体を構成していました。

でも、今の時代においては、

そのような発達のバランスの差異が顕著な人たちは、

規律を強く求める学校生活や社会生活で悪目立ちし、

いとも簡単に障害とラベリングされるようになったのです。

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昔、特に田舎では、子育ては孤独ではありませんでした。

地域コミュニティーが、おおらかに子どもたちを見守っていました。

こわいおじさんも含めて、ときに厳しく、ときに少々のことは大目に見て、

子どもを見守る地域の大人たちがいました。

 

今は、うかつに子どもに声が書けられない状況があります。

子どもがめいっぱい外で遊べない状況もあります。

子どもの声を騒音と思う大人がいるのです。

 

そんな中、親自身が生活に汲々としていたり、ストレス過剰になっていたり、

余裕がなくなり、また孤独な子育てをしているケースが多くなっています。

そうすると、夫婦関係もぎくしゃくし、DVとまではいかなくても、

子どもの発達にとって好ましくない家庭環境がつくられます。

 

『子どもの脳を傷つける親たち』(友田明美著 NHK出版新書)によると、

虐待は、子どもの脳を傷つけるということのようです。

「虐待」という言葉は、狭義にとらえられがちなので、

「マルトリートメント(maltreatment)」という言葉が使われています。

 

そこには、こんな研究結果も紹介されています。(以下要約)

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18~25歳のアメリカ人男女で、

小児期に両親間のDVを長期間(平均4.1年)目撃してきた22人と

その経験のない30人を対象とした脳皮質の容積を比較した。

 

DVを目撃したグループの視覚野の容積が、平均6.1%減少。

一方、視覚野の血流は、8.1%増加。

これは過敏、過活動になっていることを示している。

特に11~13歳の間に、DVを目撃した人の脳への影響は大きい。

 

驚くべきことに、両親間の身体的な暴力を目撃したときよりも、

言葉の暴力に接したときのほうが、脳へのダメージは大きいのである。

視覚野の一部である舌状回の容積が、

身体的DVの目撃の場合の3.2%減少に対し、

言葉のDV19.8%減少となっている。

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夫婦喧嘩は子どもの前でするものではないのですね。

この本には、親の言動が実際に脳の発達に悪影響を及ぼすことが、

脳の画像と共に紹介されています。

 

乳幼児の育児中に、母親が神経的に苦痛を感じたり、ストレス過剰で、

身体的のみならず、言葉の暴力で、子どもをしかりつけたりすると、

脳の発達に支障が出るとすれば、それが、

発達障害の増加の一つの原因であるのかもしれないと

この本を読みながら思いました。

父親の育児不在、大なり小なりのDV、夫婦間の信頼関係の喪失などなど、

そういったことがあれば、余計に子どもへの影響は大きくなるでしょう。

 

子育てが、ひたすら孤独だったり、

書物やネットに頼ったりという状況もあるのでしょう。

人と人との関わりで成り立つ子育てではなくなってしまっているようです。

 

「コミュニティー」「コミュニティーの人とのつながり、支え合い」

の大切さが、これからますます増してくると思っていますし、

すでにそんな活動をしている人がいるのです。

 

そんな場に、私自身がどう身を置いていくかのか?

焦らずご縁と流れに身をまかせていきたいと思っています。

それが夢に向かう近道だと思っています。

 

つづく

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写真は、特に意味はありませんが、

リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、

散歩中に撮った写真を適当に貼っています。