【学びの時間】ほめることの難しさの意味

『脳研究者 育つ娘の脳に驚く』(池谷裕二著 扶桑社)は、

著者の娘の生まれてから4歳になるまでの毎月の記録です。

つい孫娘のことを思ってしまいます。

 

その中で、4か月ごとに、脳研究者ならではの成長の解説的な内容や、

成長の過程の大切なポイントが書かれていて、私自身の学びになります。

 

響いたところを書きだしてみます。

まずは、「出力」の大切さ。

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脳科学の点から、読んだり聞いたりする「入力」より、

しゃべったり書いたりする「出力」のほうが重要だということは、

はっきりしている。

勉強において一番重要なことは、知識の「出力」であるというのは、

脳研究者の間では有名な事実。

  • 「わかった」という心理こそが、学習の妨げとなっている。
  • 「わかった」は知識欲減退と思考停止の元凶。
  • 「わかった気分になっているだけで、実はわかっていない」ことは珍しくない。

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学習に「答え合わせ」は必ずしも要らない。

一般に、すぐにフィードバックを与えると、他人に修正してもらえることに慣れ、

「正解を見る」ことに頼る癖がついてしまう。

すぐに成果を期待するのは学習姿勢としては好ましくない。

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次は「認知的不協和」

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「認知的不協和」とは、

「自分の思惑と現実が矛盾していることにストレスを感じる」ということ。


絵を描くのが好きな子どもが、なぜ絵を描くのか?

理由は、単に「好き」だから。

頑張っている姿を見ると、つい親はほめたくなるもの。

教育論的には、ストレートにほめるのは禁じ手。

「えらいね」「上手だね」などと何度もほめると、

絵を描くことへの興味が急速に減じてしまうことがある。

自分は絵を描くことが好きだったのではなくて、

もしかしたら、ほめられたくて描いていたのかな?」

と無意識に現状の解釈を変更する。

いわゆる「認知的不協和の解消」がおきる。

 

子どもが絵を描いていたら、

「上手だね」「えらいね」などと「行為」をほめるのはできるだけ避けるべき。

「作品」をほめる。たとえば「お父さんはこの絵が好きだなあ」。

 

テストでよい点を取ったとき

X  「がんばったね」「ごほうびをあげる」

〇 「よい点を取ると気持ちいいね」「お父さんも気持ちいいなあ」

  「次もよい点数がとれるといいね」

 

仕事(学生が見事な実験データを持ってきた)

X 「努力が実ったね」「めげずに実験を継続できる人は成果が出るね」

〇 「このデータおもしろい!」「新たな展開や仮説が生まれるね」

  「学会で発表したら世間は驚くだろうな」

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「ほめる」ことは子育てにはよいこと。
しかし、認知的不協和があるので、ほめるというのは本当に難しい。

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これは、仕事上とっても勉強になります。

 

「叱る」or「諭す」

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テレビゲームをしている子どもに、

「コラッ、勉強しなさい!」と叱ってやめさせたグループ①

「そろそろ勉強はじめたらどう?」と優しく諭したグループ②

が、結果的にゲームをやめたあと、

「あのゲームはどれくらいおもしろかった?」

という実験。

 

グループ①は、「すごくおもしろかった」と答えた。

もっとゲームやりたかったのに、やめざるを得なかったということ。

グループ②は、「そんなにおもしろくなかった」と答えた。

もしかしたら続けられたかもしれないのに、自分はやめてしまった、

やめたくなかったはずなのにやめてしまった。

この認知的不協和を解消するには、「ゲームをやめた」という自分の決断を、

自分の内面心理から説明しなければならない。

「実は、あのゲームはそれほどおもしろくなかったのだ」

「だから、自分は自らゲームをやめた」

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そしてこう書かれています。

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親が優しく諭す接し方を辛抱強く続けると、

いつしかゲームに対する興味を失ってしまう。

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これ、ほんと?

 

最後に、「トラウマボンディング」

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トラウマボンディングは、虐待する親に自分の過失を気づきにくくさせます。

わが子が自分を避けるどころか、ますます笑顔で寄ってくるからです。

しかし、虐待されて育った子は、

うつ病にかかりやすいなどの重篤な後遺症が残ります。

虐待の代償はとんでもなく大きいのです。

ちなみに「虐待を受けた子は、将来、虐待をする親になる」

という虐待の世代間連鎖については、統計学的に否定されています。

この謝った通説も、社会的差別の原因となりますので、

一方的な決めつけや邪推は避けるよう注意してください。

思い込みで人を判断してはいけません。

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虐待のニュースを聞くのは悲しいです。