この本は、主に高齢者の万引きの事例集ともいえる。
これでもか、これでもか、というくらい実際の万引きの現場が書かれている。
これは、正直、私には別世界のことに思える。
しかし、これは事実であるということ。
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日本全国の万引き認知件数は、ここ数年減少傾向にある。
しかし、現場の最前線に身を置く者としての実感でいえば、
- 警察による全件通報指導など、万引きの行為への取り締まりを強化したことで、手口がより巧妙化、かつ悪質化した。
- 認知件数は減っているが、逆に被害そのものは増えているように感じる。
実際、2014年から2015年の万引き認知件数は、130,476件から126,386件と、
8,490件も減っているのに対し、日本全国の万引き被害総額は、
4,752億円から、1兆407億円へと激増した。
一日平均にすると、その額は約28.4億円を超えるという試算もある。
(平成27年度推定/チェックポイントシステムズ社調べ)
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これは驚きの数字である。
本を読むと、お金を払えば送検されないこともあり、
おにぎり1個を盗んだくらいで逮捕すれば、
警察の手間ばかりかかるということもあって、
この数字に表れていない件数は、かなり多そうである。
いくら捕まえても、何度も繰り返す人が多く、
また、逮捕しても、それで改善されることでもない。
なぜなら、万引きするには、万引きする理由があるから。
その根本的なことが解決されないかぎり、万引きはなくならないだろう。
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2015年の1年間で、日本では24,025人もの人が自ら命を絶っている。
そのうち4割弱を60歳以上の高齢者が占めている。
その数は、60台代で3,973人(16.5%)、70代で3,451人(14.4%)にのぼる。
(内閣府の平成27年度統計による)
高齢者の自殺の理由を見ると、身体の病気、うつ病、アルコール依存症、
生活苦、負債、夫婦や家族関係の不仲、介護・看病疲れなどが並ぶ。
万引きの現場で出会う高齢者が立たされている苦境も、
これらと重なることが多い。
この社会で老人たちが追い詰められている現実が垣間見える。
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子どもの貧困率も、7人に1人とも、6人に1人ともいわれている。
世の中には、さまざまな問題が山積しているが、
中でも、格差や貧困の問題は、人間の尊厳にもかかわる重大な問題と言える。
しかし、よほど関心を持って調べたり、問題意識を持っていないと、
見過ごされてしまう問題でもあり、
私自身も、こういう本を読んで認識を新たにするものの、
のどもと過ぎれば忘れてしまうのが常であった。
要は、他人事でしかないということ。
新型コロナの死者数は、現在1万1千人を超えたくらいであり、
年間自殺者数の半分以下であるという事実がある。
医療崩壊、これから死者数は増えるなど、社会の負担という意味では、
このコロナ禍ほど大きな問題はないが、
こと死者数に関しては、自殺のほうが問題が大きい。
この問題は十分に認知され、
多くの人たちの努力によって改善されつつあるものの、
それは一部に過ぎず、一般の人たちにとっては、
他人事で済まされてきたということも事実であろう。
格差・貧困・特権階級・自己中心的風潮の見苦しさ・醜さが、
新型コロナのパンデミックで、
多くの人たちの前にさらけ出されるようになってきた。
すなわち、これまで覆い隠されてきた、
実は本当に大切な不都合な事実が、他人事ではなくなってきた、
私にはそう思える。
この未曽有のコロナ禍を克服したとき、
社会の様々な問題は他人事ではなく自分事として、多くの人がとらえ、
そのうえで、自分自身を大事に生きるようになる。
言い換えれば、
【学びの時間】一生、懸命はたまらない? - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)
ここに書いた天命を、多くの人々が見つけて生きる時代になる。
私にはそう思えてならない。