
『河合隼雄の幸福論』(河合隼雄著 PHP文庫)より
味わいことばノート 169
子どもがそれほど取り立てて「問題」を起こさずに生きている家では、
親たちは「子育て」にそれほど苦労せず、
あるいは、それを楽しんでいるかというと、そうでもなさそうである。
「子育て」を楽しいかと感じるかという質問をすると、
楽しいと感じる親の数が欧米と比して、日本は相当に少ない、
という統計がある。
(中略)
日本人の特別な事情として考えられることは、
「上手な子育てによって、子どもを幸福にしたい」
という気持ちが強すぎることではないだろうか。
子どもにあれもしなくては、これもしなくてはと思う。
あるいは、いろいろなことをしてやりたいと思う。
しかし、なかなか思いどおりにゆかぬので、
どうしても親は、罪悪感を感じてしまう。
そのうえ、「子どもを幸福に」というときに、
子どもがその子の本来の道を歩むことを考えるのではなく、
よい成績とか、よい大学とか、世間一般の評価にそのまま頼ってしまう。
親は、本当に子どもの幸福のためにか、自分自身の幸福のためにか、
どちらのために子育てをしているのかわからなくなってくる。