【学びの時間】しわ寄せる社会とその時代を経て⑤ 子育てを楽しむことの難しさ

『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』山田昌弘著 光文社新書から

引き続き学びます。

 

今回は、②に書いた日本の特徴のあと二つについて学びます。

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  • 恋愛感情は重視されない。愛情であれば配偶者よりも子ども、夫婦であればれない感情よりも経済生活を優先する。
  • 高等教育費用を含む将来にわたっての子育ての責任が親にかかる。それは、子どもの将来を第一に考えるのが、親のの望みでもあるからである。恋愛感情に身を任すよりも、これから育てるであろう自分の子どもの生活、特に経済生活を第一に考える。

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日本や東アジアの結婚後の特徴は、子どもができたら、

子どもの将来が何事にもまして大事と考え、

いきがいが子どもにシフトするということのようです。

親の時間の大半は、特に母親の場合は、

ほとんど全部が、子どもに向けられるということです。

それをよく表した前野マドカさんの人生体験が、ここに載っています。

インタビュー:前野マドカさん「幸せでウェルビーイングな世界とは」 | Takahiro Blog (takahiro-blog.com)

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「マドカの夢は何なの?」

ある日、公園で仲良くなった女性とお話していたら、

唐突にそう聞かれたんです。

「自分の子どもたちを立派に育てることです」

わたしは、夫を支えて育児をがんばろうと考えていたので、

自信をもってそう答えました。

しかし、その女性はこう言ったのです。

「マドカ、それではあなたの人生を生きていることにならないよ」

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結婚と子育ての二つの側面(以下要約)

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「結婚」には、好きな人と一緒になるという側面と、

一緒に経済生活を始めるという側面があり、

その2つがそろわなかったとき、欧米では恋愛感情を優先し、

日本では経済生活を優先する傾向が強い。

これが、日本の少子化を加速させていると考えている。

 

欧米では、子育て自体が楽しい、子どもを育てることが、

自分を成長させるといった「使用価値」としての意味づけが中心。

日本では、欧米的な意味ももちろんあるが、日本の子育てが、

社会からどう評価されるか「市場価値」に関する強い意味付けがある。

 

欧米では、子どもが成人すれば、親の責任は果たしたとみなされる。

親は、原則、大学など高等教育を負担しない。

ヨーロッパ大陸諸国では、大学の授業料は(自国民には)極めて安価。

アメリカ・イギリスでは、子どもが大学に行きたい場合は、

原則自力で費用を工面する。

成人後、子どもは独立して生活することが原則。

ヨーロッパ諸国では、若者が自立するための社会保障制度も備わっている。

 

日本では、

人から評価される子どもの価値として大きい1つの要素は「学歴」。

そして学卒後に続く職業ランクであり、また娘の場合は、

どのような職業ランクの男性と結婚したかという価値。

それは、単に、自分の子どもの価値を高めるという経済的意味だけではない。

子どもに、「将来、よい人生を送ってほしい(ポジティブ面)」

「みじめな思いをさせたくない(ネガティブ面)」

という親の愛情にも裏付けられている。

 

日本では、高等教育機関、そして、子どもが成人した後も、

子を支え続けることが求められる。

だから、子どもの数を絞らざるを得ないのである。

これは、日本だけでなく多くの東アジア諸国、中国や韓国、シンガポールや台湾、

香港などの少子化に最も寄与している要因だと考えられる。

 

子どもの価値は、育てることの楽しみ以上に、

育てた子どもが社会的にどのように評価されるかが重要なのである。

 

また、単身赴任や出稼ぎなど、子どもをよい条件で育てるために、

父親が妻子を経済的に支えるようと、一人暮らしする。

そうなると、父親の「子育ての楽しみ」は失われる。

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「使用価値」「市場価値」、この言葉、なじめませんね。

それはそれとして、私個人的には、香港に駐在し、

また、韓国、台湾、ベトナムなどの人たちとの交流もしてきて、

ドイツやカナダにも住んだことがあるので、

上記の内容は、なるほど、そうだよねと思えます。

子育てが、親の楽しみではなく、負担になっているとしたら、....

それは、社会の何かが大きく間違っているのです。

 

かつては、働くということには、滅私奉公的な意味合いがありました。

会社優先で、自分や家族は二の次、三の次でした。

会社も、終身雇用を前提に、家族手当や住宅手当も支払い、

家族を丸抱えしているという経営でした。

だからこそ、社員を好きなように動かせるというのが常識です。

家を建てたら、すぐに転勤になるということが言われていましたが、

本当にそうなっていました。

一方、欧米では、勤めたらそこで働くというのが前提です。

給料の高い、将来幹部になるようなエリートは例外ですが、

一般の社員に転勤はまずありません。

社員は会社に身を委ねているという感覚もないし、

会社も家族丸抱えという意識は毛頭ないのです。

転勤しろと言われれば、転職します。

 

また、これだけ、いい学校に行って、いい会社に勤めることが、

人生の幸せにはつながらないことが明らかになっているのに、

中学受験その他、子どもの教育にかけるお金と時間は、

いまだに減るどころか、増えているのではないかと感じられるほどです。

私の接する子どもたち、来なくなった子たちの、

習い事や塾通いは、半端じゃないほど多いというのが実感です。

 

それは一つには、日本で、教育産業が発展し過ぎたこともあると思います。

私は、家庭教師のトライの宣伝を見るのが、とってもつらいです。

ドリームマップで何度か授業にいった経験でも、

無邪気で元気な子たちが多い中で、

中学受験、不登校、コップの水の少なさ、生気のなさなどなど、

本当におかしいよねと思えることがたくさんあります。

勉強の問題だけではないでしょうが....。

 

子どもたちには、そんなに勉強しなくてもいいよ。

好きなことを思う存分やってほしい、そう思うのです。

そうは言っても、個人的には、好きなのはゲームだから、

毎日ゲームばかりやるというのは、どうかと思うわけです。

ここは古い人間ですから。

 

子どもは、親が育てるのではなく、コミュニティが育てる、

やはり、そんな感覚としくみが必要だと思います。

 

これで、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』

山田昌弘著 光文社新書からの学びは終了しますが、

「その時代を経て」につながっていくように、

⑥以降も、折に触れて続けていくことになると思います。

 

写真に意味はありませんが、

リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、

散歩中に撮った写真を適当に貼っています。