『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』山田昌弘著 光文社新書から
引き続き学びます。
今回、②に書いた日本の特徴の一つ、このことについて学びます。
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仕事による自己実現を目指す女性は少数である。
仕事を続けるよりも、豊かな生活をすることに生活上の価値を置く。
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なぜ、仕事による自己実現を目指す女性は少数なのでしょう?
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欧米で広まった「仕事による自己実現」という考え方は、
日本では少数の女性に影響を与えたに過ぎなかった。
多くの女性にとっての人生の目標は仕事で活躍する以上に、
「豊かな消費生活を送る」というものである。
また豊かな消費生活を前提として、子どもを立派に育てることである。
男性もその目的を共有していても、仕事を辞めるという選択肢がないから、
経済力で貢献しようとするだけである。
日本では仕事を苦労して続けている女性よりも、仕事をしていなくても、
豊かな生活をして、
子どもをよい学校に通わせている女性を評価する社会であるからである。
それゆえ、女性にとっての仕事は、豊かな生活や、
子どもにお金をかけるための「手段」としての意味が強い。
既婚女性のパート就労の理由で多いのは、
「子どもの教育費」および「住宅ローンの返済」、つまり家計補助である。
これは多くの日本人男性にも当てはまる。
逆に言えば、「豊かな消費生活」を送る見通しがあれば、
無理に両立を目指す必要はないと考える女性が多いのだ。
現在、既婚女性の就労が増えているのは、
夫の収入だけでは、子どもの教育費や住宅費が賄えず、
豊かな消費生活が送れない状況にある既婚女性が増えているからだと言える。
その意味で、両立支援が必要であることは、言うまでもない。
欧米では、「女性が仕事を続けたいから結婚しない、子どもを持たない」
というロジックが妥当だろう。
それは、女性が仕事をするのが必要、かつ当然とみなされ、
仕事が自己実現の手段と思う女性が多いからである。
仕事を失うと、夫に対しても弱い立場になるからである。
その前提として、職場で女性差別が少なく、
昇進などで差別されない職場環境がある。
だから、欧米においては、保育所整備や育児休業の充実、
夫の家事参加の推奨といった両立支援が有効なのである。
しかし、日本では、既婚女性が仕事をすることは、
必要かつ当然という状況にないし、
仕事での自己実現欲求を満たしている女性はごく一部である。
非正規雇用や一般職をはじめとした昇進が期待できない状況にある
多くの未婚・既婚女性には、
仕事の継続をしたいために子どもを産まないというロジックは当てはまらない。
だからといって、保育所整備や育児休業の重質、男性の育児参加促進が、
不要と言っているのではない。
それだけでは、不十分ということを言いたいのだ。
先の述べたように、女性が仕事と育児を両立できる環境を整えたうえで、
女性が仕事を生きがいにできるような環境整備が「先に」必要であることを
強調したかったのである。
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日本では、明治以降にできた制度、因習・風習、
男性観・女性観の思い込みが、いまだに根深いため、
女性が自己実現を仕事に求めようとしても、
そういう環境が整っていないのです。
既婚女性の就職先は、ほとんどなく、パートしか選択肢がない状態です。
若者の多くが、正規雇用を諦めて、
非正規雇用にならざるを得ないのと同じように、
社会の構造的問題だといえます。
我が家も、例外ではありません。
私の奥さんは、小学校の先生をしていました。
結婚して翌年に娘が生まれ、産休育休をしているときに、
私のドイツ赴任が決まったので、仕事を辞めました。
教師を辞めるということは、教師免許返上ということで、
再び、正規の教師の仕事に就くことはできないのです。
2004年に関西から東京に来て、下の子が中学校に入ったころから、
学校の図書室の職員のパートの仕事を見つけて、毎日通っています。
しばらくして、司書の資格が必要ということになったので、
夏休み+αで、コースに通い、資格を取りました。
もう、15年以上、国立市の中学校で仕事しています。
司書の資格を得ても給与は上がらず、昇給はほぼなく、
最低賃金に追い抜かされるのではと言っていましたが、
最低賃金に毛の生えたような報酬で、今もお仕事しています。
教員免許を再取得するなどの方法で、
教員に戻ることはできなくはないようですが、
そう簡単な話ではないでしょう。
簡単に、教師に戻れる方法があってもよさそうです。
ネットで見ていたら、こういうのがありました。
【離職後、再び教員に】 離れて分かった教職の魅力 (kyobun.co.jp)
育児を経験し、海外の学校を見た元教師は、
辞める前よりも、もっと良い教師になれるのではと思います。
調べても、再び教師になることの難易度はよくわからないのですが、
教師不足のいまは、いろんな試みがなされているはずです。
ただ、日本の状況を見ていると、制度を変えるということについて、
できない理由ばかり挙げたり、
明らかに、面倒なのでやりたくないといった風潮が見て取れます。
がちがちな制度ではなく、もっと緩やかな仕組みにしてほしいものです。
③では、若者の置かれた環境について書きましたが、
女性の置かれた環境の抜本的改革をおざなりにしたままでは、
少子化対策は、お金ばかりかかって、
効果は限定されるということになりかねない、
これが、ここまで学んできたことです。
次回は、子どもを育てることについて考えてみたいと思います。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
散歩中に撮った写真を適当に貼っています。