『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(金間大介著 東洋経済新聞社)
から、引き続き学んでいきます。
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人前でほめるくらいなら何も言わないでほしいと学生が願う背景には、
2つの「うつ」の心理状態が関係していることがわかってきた。
1つ目は、自分に自信がないこととのギャップである。
- 現在の大学生の多くな自己肯定感が低く、いわゆる能力の面において基本的に自分はダメだと思っている。
- その心理状態のまま、人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる。
- つまり、ほめられることは、そのまま自分への「圧」となる。
2つ目は、ほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、
自分という存在の印象が強くなったりするのを、ものすごく怖がる。
ほめられて嬉しいと感じる気持ちは、もちろんあるが、
そんなものはミジンコ級に感じるほど、目立つことに対する抵抗感は絶大。
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このあたりから、年季の入った昭和のおじさんには、
理解が難しくなってきました。
負けず嫌いは、負けるのが嫌いだから、負けると挑んでいくのだけれど、
負けるのが嫌な「いい子症候群」の若者は、
負けるのが怖いから、勝負そのものを避けるのです。
そのあたりは、心理的な点からはわかります。
しかし、この怖がり方は尋常ではないと感じます。
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彼らにも、承認欲求がちゃんとあるので、
人前じゃないところでほめられることは、原則、好意的に受け止める。
現在の若者は、負けたくないという思い自体は弱くない。
いや、正確に表現すると、負けるのが怖い、という意識はとても強い。
あまりにも負けるのが怖いので、負ける可能性が少しでもあるのなら、
そもそも競争しないという結論になる。
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何をさておいても、人の目が気になる、人からどう思われるかが気になる、
誰しもそんな面はありますが、どうしてここまで怖れるのでしょうか???
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名指しで質問されたとき、最も多いリアクションは「固まる」。
一生懸命考えているからではない。
一生懸命考えている姿勢を見せることが正解。
困っていれば、相手から何らかの動きがある。
場合によっては、答えを言ってもらえるか、あるいは質問が取り下げられるか、
いずれにしても、その場は一件落着。
次に多いリアクション
- 笑いながら(そういう空気を作りながら)何らかの返答をする。
- 質問に質問を返す。
- 横にいる同期に小声で助けを求める。
いい子症候群の若者たちは、上司や先輩に対しては、
何がその場において正解かを考える癖がついている。
基本的にはまじめで神妙な姿を見せる。
同期など同世代に対しては、表面的で軽い関係を維持する。
後輩にはどういう感情を抱くかというろ、「怖い(恐怖)」である。
後輩もまた異星人であり未知との遭遇だから。
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これは、自己不在からくる行き過ぎた「恐怖」であり、
何事にも委縮してしまう心理が、
いまの若者にあるということなのでしょうか。
それにしても、「その場しのぎ」「形だけを整える」のを
毎日やっているとすれば、どこかで行き詰まってしまいます。
社会に出て人間関係が複雑になると、仕事を続けていくのは難しそうです。
自己崩壊してしまうのではないかと、心配になります。
<寄り道>
全国で引きこもりが、少なくとも146万人いると言われています。
「ひきこもり」推計146万人 主な理由“コロナ流行”内閣府調査 | NHK | 新型コロナウイルス
この記事では、コロナの影響となっていますが、
もっと根深いところに、その原因はあると思えます。
若者の年齢層では、
「いい子症候群」が疲れ切った結果のように思えて仕方がありません。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
手元にあった写真を適当に貼っています。