足し算の時間を過ごす@滝乃川学園

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私たちの多くは、いま、引き算の時間を過ごしています。

 

『ポストコロナの生命哲学』福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史著(集英社新書)の

伊藤亜紗さんが書かれた「思い通りにいかないことに耳を澄ます」に

「引き算の時間」というのがありました。

以下、引用に近い要約です。

 

「引き算の時間」とは、

ゴールを見据え、そこから逆算して今しなければならないことをする

という生活のスタイル。

 

引き算の時間の前提は、均一な時間があるということ。

産業革命以降から現代に続く大量生産・大量消費の時代、

均一な製品をいかに速く大量につくるかが求められた。

「誰がつくっても同じ」になるよう、労働時間が画一化され、

私たち人間も置き換え可能な画一化されたものとみなされるようになった。

時給という考え方に見られるように、時間も均一化されていった。

 

体調の悪い時、均一の時間はとってもつらいですね。

著者は、こう続けます。

 

障害者という概念は、人間の画一化や時間の均一化が起こったときに生まれた。

産業革命以前、目の見えない人の「見えない」は、その人の特徴と捉えられ、

目が見えなくてもできる仕事が割り当てられた。

産業革命によって、これだけの時間労働したら、

これだけの成果が出るはずだという画一性に乗れない人を

障害者だと定義するようになった。

目が見えないことは、もはや、その人の特徴ではなく、

「見えないからできない」という能力の欠如と捉えられるようになった。

 

1980年代頃から、考え方も変化し、障害も原因は個人ではなく、

社会にあるという見方が広がり、日本でも2011年につくられた

改正障害者基本法における障碍者の定義もそれに則っている。

しかし、この障害の「社会モデル」は、

必ずしも完全に一般的になっているとは言えない。

 

定義を変えるのに、ものすごい時間がかかっていますね。

 

そんな偏見で見られてきたはずの障碍者が集うステキな場所があります。

国立市、南武線の矢川の近くです。

社会福祉法人滝乃川学園|障がい児者の為の福祉施設 (takinogawagakuen.jp)

130年前から連綿と続いてきた伝統の場所、

このページを見る限り聖地ともいえる場所です。

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社会福祉法人滝乃川学園は一八九一年にキリスト教精神に基づき

石井亮一が創設した、日本初の知的障がい児者のための福祉施設です。

ご利用者様が自分らしく生活できる環境を目指し、

一歩ずつ理想の施設づくりを目指してまいります。

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この精神は、人間の画一化や時間の均一化とは無縁の精神だと感じます。

「門扉をつけずに学園を常に地域に開放したい」という創業者の強い想いは、

「津久井やまゆり園」の事件後のいまも生きています。

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滝乃川学園正門

その場所に今日、紹介していただいたみずえさんと

ピッピと一緒に行ってきました。

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滝乃川学園ガーデンプロジェクト | Facebook

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ここは多様な人が集い、一人ひとりを尊重し合う場です。

植物の世話だけでなく、お散歩をする、こんな場所があるよと話題にする.....

そんな関わり方も大歓迎な場所。

緩やかに繋がり一緒にガーデンを育んでいきましょう。

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これは活動のしおりに書かれている言葉です。

 

ただその場にいて、ぼーっとしている人はいませんが、それでもOKなのです。

こんなステキな場所です。

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聖三一礼拝堂

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礼拝堂内部

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天使のピアノ

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石井亮一・筆子記念館

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記念館内部

そして、ここは小川の流れる里山なんです。

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上述の本のなかで、伊藤亜紗さんは、こう語っています。

Facebookでも引用したフレーズです。

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私たちの社会では、時間は均一であるという前提の下、

時間を引き算しながら生活するということが行われてきましたが、

毎日の時間が均一ではないというときには時間の引き算はできません。

いや病気でなくたって、実は生きている限り時間は均一ではないはずです。

それを私たちは無理やり均一の時間、

時計やカレンダーの時間に押し込めてきたのかもしれません。

 

一方、植物が持っているものは、「足し算の時間」です。

それは太陽の動きに合わせて、

日々少しずつ足していくという純粋に生理的な時間です。

コロナ下で植物に目が行くようになったのは、引き算ができなくなり、

空白の時間にほっぽり出されたことで、

私たちの感覚が植物にふっとシンクロしたのかもしれません。

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まさに、滝乃川学園のガーデンプロジェクトで過ごした時間は、

間違いなく引き算ではない、足し算の時間でした。

 

今日は、初回参加ではありましたが、枯れた植物の茎を刈ったり、

草を抜いたり、しっかりお手伝いをしました。

集まっている人たちは、とってもステキな方たちでした。

 

今日は、みずえさんもお昼までの予定だったこともあり、

初回の私たちも、お昼過ぎに失礼しました。

ピッピと矢川駅近くで昼食を一緒にしたあと、

私は、足し算の時間をもっと楽しもうと、

下見に行った時と同じ道を歩いて帰ることにしました。

春のような陽気だったので、西立川でとどまらずに、

そのまま、昭島の自宅まで歩いて帰ってきました。

約2時間、1.6万歩近い足し算の時間でした。

 

自然は、このように、足し算の時間で生を営んでいるんです。

 

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おまけのお散歩道端花図鑑(16)

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ガウラ

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コスモス

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タイワンシュウメイギク

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ホウキギ

いやぁ~、いい時間だったね!

 

12月5日も、またきっと行くことになるでしょう。