Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』

「ここいまタウン」への歩み

【学びの散歩道】子どもたちの将来は大丈夫なのだろうか?(88) 不登校を考える② 現場の努力

(87)には、学校や自治体は努力していると書きました。

『学校とは何か』(汐見稔幸編 河出新書)に書かれているものは、

そんな努力の数々です。

 

横浜市立の小学校の宮下章先生

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大人だって忘れることありますよね。

社会に出てから大事なのは、忘れてしまったときのどうするか。 

どうしてもできない事情があったかもしれないし、

ただ忘れてしまったかもしれない。

ノートや鉛筆、消しゴムなどの筆記用具を忘れても、

私はチェックしたり叱ったりはしません。

新しいものをいくつかストックしてあるので、それを渡します。

教科書を忘れたら誰かに見せてもらえばいい。

忘れ物をした子を叱っても忘れ物はなくならないと思うんです。

言われるほうも嫌だと思いますし、こちらでできる準備はしておく、

そうすると気を付けて持ってくるようになる子もいるし、

ずっと忘れてくる子もいます。

でもその子はきっと、言われても言われなくても忘れてしまうと思うんです。

じゃあ、そんなときにどうやって、その場を乗り切るか。

自分一人で難しければ誰かに手伝ってもらってもいい。

先生がストックを持っているなら借りればいいわけです。

自分ができないことは誰かに助けてもらう。

でも迷惑をかけてしまったら詫びることも必要になる。

そういう経験も社会に出ていくために大切な学びだと思います。

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長岡市立表町小学校 水谷徹平先生

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ある学校では、先生やこともが変われば、

授業や活動が変わるのは当たり前のことで、

「子どもにいいと思うことはどんどんやりなさい。責任は私がとるから」

と言っていただけることもありましたし、

ある学校では、「すごいけど、水谷先生だからできるんだよね」と、

前の年や次の年、ほかの先生との兼ね合いから、

あまり賛成されなかったこともあります。

 

教員も人間ですから、子どもにとってよさそうだという活動を思いつき、

やってみようと勇気を出して声をあげたときに、

ネガティブな経験を重ねていたら、

もう余計なことはしたくなくなると思います。 

私は幸い、若いころにポジティブな経験を重ねさせてもらったので、

そんなときにも「すみません」と謝りながら、

子どもたちの学びにとって良いと思うことは、何度も実践させてもらいましたが、

どの学校でも共通して言えることは、

教師や子どもの「したいこと」を実現できる学校のほうが、

エネルギーが高まるということです。

そのエネルギーが高いと、学校がよりおもしろい場になりますし、

学びも広がり深まります。

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インクルーシブの研究者 野口晃菜(一般社団法人UNIVA)

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社会はマジョリティを中心に作られています。

私たちは、たまたま目が見える、たまたま足が不自由ではない、

たまたまじっと座っていられます。

その人たちに合わせて社会は作られています。

そして、いまの学校もマジョリティに合わせて作られています。

教室を飛び出してしまうAさんがいたとしましょう。

困難さの原因を個人の障害にあると考える「個人モデル」のアプローチでは、

Aさんが飛び出さないようにするための訓練や練習をします。

一方で、多様な人がいることを前提に社会がつくられていないことに

問題があるとする「社会モデル」では、

Aさんのような特徴のある人がいることを前提として、

学校や学級の環境づくりをします。

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以上は、「不登校」と直接関係はしていないのですが、

小さな日常のことから、学校の運営にかかわるところまで、

この本を通して、さまざまな試行錯誤が行われていることがわかります。

 

その最たるものが、これですね。

インタビュー/岩本 歩さん|イエナプラン教育にもとづく自由進度学習で日本の教育を変えていきたい【注目の若手&中堅教師に聞く「わたしの教育ビジョン」Vol.04】|みんなの教育技術

公立小学校で、

イエナプランを参考にした教育システムを取り入れている例です。

『イエナプラン教育を取り入れた自由進度学習』(岩本歩著 明治図書出版)

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こうやって本を書きながら、

本当に持続可能な取り組みになりうるのか考えてしまいます。

しかし、イエナプラン教育を参考にした授業つくり、

学校つくりを進めていくことで、「働き方は変わるのか」と問われると、

私は自信をもって「その通りです!」と答えられます。

子どもが自立していく中で、自分で計画を立てて、

自分で学習を進めていくことができるようになっていくからです。

一人一人の子どもと向き合う時間が増えるだけでなく、

成長をじっくりと見つめられるようになります。

私自身の負担も減りました。

年間を通して、時間外労働が20時間以内に収まり、

家族と過ごす時間が多くなりました。

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これは、上記のエネルギーが高まる

教師や子どもの「したいこと」を実現できる学校のあり方ですね。

 

求められるのは、一人一人に合わせた学習です。

今の学校システムでは、どうしても、

みんながここまで習得しましょうというやり方になっています。

子どもたちが放課後にやっているのを見る限り、

宿題も一律に出されているようです。

それについていけない子たちをいかに拾うかに、

かなりの労力が費やされているように思えます。

イエナプランを取り入れた自由震度学習にあるように、

自分でここまでやろうと決めて進めていく学習システムが、

望ましいのではないか、私はそう思っています。