引き続き、『正解がない時代の親たちへ』(おおたとしまさ著 祥伝社)
から学びます。
<「人材育成」と「教育」>
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- 「木材」とは、もともと生きていた樹木を家や燃料など、何らかの目的に使用するために切り倒し枝葉を落とし、皮をはいだもの
- 「食材」とは、もともとは生きていた動物や植物を食用にするために殺し、切り刻んで調理しやすい状態にしたもの
「人材」にも同じようなニュアンスがある。
「人材育成」と「教育」は似て非なるもの。
- 「人材育成」とは、「この組織を機能させるために、こういう部品が必要だから、それに合致する部品を作ろう」という目的ありきの発想
- 「教育」とは、「子どもの人格を尊重し、社会とのかかわりのなかで、その人権を高め、幸せに生きているようにしよう」という子どもありきの発想
人材育成の発想で子どもを育てようとすると、子どもの自己肯定感は下がる。
目的ありきの発想で人格が二の次にされるのだから当然。
<これからの時代を生きていくために必要なこと>
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さまざまな教育現場を訪れ、
さまざまな先生や保護者や子どもたちの声を聴いた経験から、
著者は、この3つにまとめている。
- そこそこの知力と体力(ほんとうにそこそこでいい)
- やり抜く力
- 自分にはない能力をもつ人とチームになる力
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<自分のモノサシをはぐくむ教育>
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「グローバル化」の名のもとに標準化してしまったら、
どんなに高性能であったとしても、結局買いたたかれます。
みんなと同じモノサシで、自分を大きく見せるより、
ひととは違ったモノサシをもつことが
価値を発揮する時代がやってくるということ。
一方、「ダイバーシティ」な社会とは、
汎用性の高いモノサシでひとを比べるのではなく、
お互いの違いを認め、尊重し合える社会である。
そのような社会では、世界のどこに行っても、
自分自身の軸を失わず判断基準を惑わされない。
強烈な個性こそがものをいう。
21世紀の子どもたちに必要なのは、標準化ではなく、
自分にしかない個性を磨き上げることであるはず。
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<「教養」をはぐくむ教育>
「教科」というものの意味は大きいようです。
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「ひとつの卵」から考えられること
- 家庭的な視点「これで卵焼きをつくりましょう」
- 栄養的な視点「卵にはどんな栄養素が多く含まれていますか?」
- 数学的な視点「この卵の容積を量るにはどうしたらいいか?」
- 社会的な視点「なぜこの卵が、スーパーで1個20円で売られているのか? どこで生産されてどうやって流通して、どこで値段が決まるのか?」
- 理科的な視点「そもそもこの卵が何の卵であるか? どうやったら認めることができるか?」
あえて意図的に角度を変えて見てみることで、
ものごとの本当の姿が浮かび上がってくる。
それぞれの強化の視点から世の中を見る訓練を積むことに意味がある。
その集積がいわゆる「教養」になる。
さまざまな教科の視点を知らずに世の中を見るということは、
自分の好きな視点から見える部分だけを見ているだけ。
逆に言えば、学校の各教科の先生は、
それぞれの専門分野から見える風景とその面白さを語ってくれればいい。
子どもたちは1日6時間教室で「へー、面白いな!」という具合に、
それをぼーっと聞いているだけでも、相当な教養が得られるはず。
本来学校とはそういうところなのである。
テストで点を取るためみたいなせこい観点で教科を教えているかといら、
教科が無味乾燥になり、学校がつまらなくなる。
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学校で行われている「教科」の授業は、
本来求められる「教科」のあり方ではない、ということなのでしょう。
「イエナプラン教育」についても学んできましたが、
教科をまたいだ学習、ある事柄をいろんな強化の観点でかんがえるといった、
多くの試みがなされていると思います。
この本では、今の学校では「教養」ははぐくまれないと言っていますが、
最近は、イエナプランの学校が、私立の「大日向小学校」に加えて、
公立の「常石小学校」@広島県福山市もできるなど、
じわじわと広がりを見せています。
その他にも、一条校ではないものの各種オルタナティブ教育の学校もあり、
フリースクール、高校ではN高など、選択肢は広がりつつあります。
一方、そうではない既存の学校はダメなのかというとそうでもないようです。
いろんな試みが行われているようです。
残念ながらまだ観ていない『夢みる小学校』にも、公立の小学校、
伊那小学校、桜ケ丘中学校(世田谷区)も登場しているようです。
以前「学び合い」についての本を読んだこともありますし、
ドリームマップで授業に行くと、学校によっては、
児童生徒がグループで調べまとめた結果が、
教室や廊下に貼られていることも何度もありました。
現在の学校の教育現場では、いろいろなことが行われているようです。
次回は、山形県の小学校の例についての学びを書こうと思っています。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
散歩中に撮った写真を適当に貼っています。