Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』

「ここいまタウン」への歩み

【学びの散歩道】子どもたちの将来は大丈夫なのだろうか?(55) 駆り立てられる高校生

『「日本」ってどんな国?』(本田由紀著 ちくまプリマー新書)は、

様々なデータ分析をして、日本と諸外国の状況を比較しています。

 

日本の高校生は、どんな存在なのでしょうか?

 

そもそも、高校入試に関してこう述べています。

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高校は公立でも入学試験がある。

これは、当たり前ではない。

  • アメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデンなどでは、地域の高校に入学試験なしで進学し、高校の中で提供されている様々な科目を選んで学習する。
  • ドイツやスイスでは、中学校に入る時点で、学校の成績と本人の進路志望によって、どのタイプの学校に進学するかが分かれる。
  • 韓国でも、1970年代半ば以降、高校入試は廃止されて抽選制度になっている。

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韓国の抽選というのがよくわからなかったので調べてみると、

こういうことのようです。

韓国の高校入試は「抽選」で決まり、経済格差が固定化…政府の打ち出す解決策は? | J-WAVE NEWS

これもまた、問題を抱えているようです。

 

2020年3月の中学卒業者の高校進学率は、98.8%とほぼ100%です。

こんな状態で、高校入試なんているのか?と思えますが、

いざ廃止論が出ると、反対する勢力が多くあるのではないかと思えます。

 

今のままが続くと、高校に上がるときに、選別が起こったままとなります。

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高校によって、合格の難易度や高校内での勉強の難しさ、

そして高校卒業後の進路に大きく違いがある。

これが「高校の偏差値輪切り体制」。

どんな高校に行けるかが、その後の人生を左右するからこそ、

小中学校の義務教育の間に、何とか出来るだけ高い「学力」を点けさせよう、

つけよう、と駆り立てる圧力が、教育機関や保護者、

そして、児童生徒自身の間にかなり行き渡っている。

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松岡亮一(社会学者)の言葉

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日本の高校教育制度は、「生まれ」によって、生徒を各学校に隔離し、

異なる教育空間の中で卒業生を見本として、

進路を自発的に選ぶように促す社会化装置である。

「試験不安」で子どもたちを駆り立て、

高校入試後は、個々の高校がそれぞれ「トラック」

(陸上競技の走路のように人々をルートに割り当ててゆく作用のこと)

のように機能して、生徒を異なる将来に向けて送り出していく。

このような教育制度の実績のもとでは、学習そのものの意義を感じなくなるもの、

さもありなんと思えてくる。

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なんともやるせない表現です。

 

さらに続きます。

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1990年代以降、「学力」だけでなく、「人間力」「生きる力」も大事だ、

と大声で言われるようになってきましたが、

そうしたふわっとしたスローガンが何を意味しているのかは不明ですし、

「学校」の現場は大して変わらないまま、

「何でもできる、大人にとって都合のいい、スゴイ人になってね」

という勝手な要請にすぎなかったという反省を、

政治家も大人全体も必要としていると、私は考えています。

むしろ、次々に新しく社会に参入してくる世代の、

様々にありえた個性やスキルを、押しつぶすように、

「学校」は作用してきたのではなかったか、

どんなひどい状況でも、大半の人がそれを経験して慣れてしまえば、

「あたりまえ」のように思えてしまいます。

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何事につけても、子どもたちは操作されていると言えます。

では、駆り立てられる高校生は、どう思っているのでしょうか?