ある森の中に、フクロウの夫婦が住んでいた。
森は静かで、幸福な毎日だった。
私たちの大切な森、ここにずっと住んでいたい。
二羽はそう思っていた。
ある日、眠っている間に、騒々しい音がして目が覚めた。
よく見ると、人間たちがやってきて、木を伐り始めた。
ブルドーザーが入り、あっという間に森の大半が切り開かれた。
そして、多くの家ができ、多くの人間が移り住んできた。
フクロウの夫婦は、心穏やかではなかった。
なんで私たちの幸福に、人間は土足で上がり込んでくるんだ。
毎日、騒音が響き寝られやしない。
わずかに残った森にも人間たちが入ってきて、ごみをまき散らしていく。
幸福な森から自然はどんどん失われていく。
フクロウの夫婦は人間を恨んだ。
毎日が悶々と過ぎていく。
そんなある日、毎年やってきていた渡り鳥たちが、1年半年ぶりにやってきた。
「フクロウさん、ごきげんよう」
「ごきげんもくそもないだろう」
フクロウは答えた。
「僕たちは、この森に半年しかいなくていい。
それに比べて、ずっと住み続けているフクロウさんは大変だね」
「その半年だって、もうこの森にはいないんだよ。
森がこんなになってしまったので、もうここには住めない。
だから、去年から住むようになったほかの森に行く途中なんだよ」
「2年前に、北へ帰る途中にステキな森を見つけていたんだ。
その森は、とってもステキだよ。
おかげで、僕たちは今でも幸福さ。フクロウさんたちも、おいでよ」
「いや、私たちには無理だよ、この住み慣れた森を離れるなんて....」
フクロウは答えた。
「起きてしまったことに、くよくよしてもはじまらないよ。
もう静かな森を取り戻すことはできないんだから。
それを受け止めて、何ができるか考えてみたら。
きっといいことがあるよ。」
そう言って、新しい森の場所を教えた渡り鳥たちは、飛んで行きました。