田坂広志「風の便り」六季 第20便/この一瞬の重み より
将棋の羽生善治棋士が、かつて、ある対談で、次のように述べています。
いまでは、パソコンを使って、簡単に棋譜研究をすることができます。
しかし、興味ある局面は、実際に駒を使って盤に並べてゆっくり考えます。
駒を盤に並べて見るのは、パソコンだと、
クリックするだけで次々と進んでいきますから、
次を早く見たいという気持ちで駒を進めてしまって、
その一手の重みを実感できないからです。
パソコンで棋譜の研究をしていると、
どうしても、この先を早く見たいと思ってしまって、
自分で考えることをしなくなるのです。
この羽生棋士の言葉は、
決して将棋の世界だけを語っている言葉ではありません。
「この先を早く見たい」という願望が、いまの世の中には、溢れています。
そして、その願望のために、我々は、大切なことを忘れてしまうのです。
「この先を早く見たい」と思うあまり、
「この一瞬の重み」を忘れてしまうのです。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
散歩中に撮った写真を適当に貼っています。