とかくに人の世は住みにくい - がんばれ! の先にあるもの -

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この年の瀬は、これまで全くご縁も興味もなかった仏教に少しだけ触れています。

築地本願寺の銀座サロンで、先日「シネマ法話」に参加しました。そしてこの本を読んでみました。たまたまでです。

ゆっくりとした年末を過ごしながら、改めて、今の世の中の危うさを感じています。

この本に書かれている3つのエピソードが、とても感慨深いので、より味わうために、ここに書いています。

 

”智に働けば角が立つ、情に掉させば流される、意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。”

これは、夏目漱石の『草枕』の冒頭に書かれた有名な一節です。

 

さらに現代は、夏目漱石の時代からは比べ物にならないくらい、住みにくい人の世になってしまったと思えるのは、私一人だけでしょうか。

 

エピソード①

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私の娘の友人に、オーストラリアからの留学生がいました。彼女の母親が日本人なもので、日本に来たのです。だが、彼女はスランプに陥り、うつ病になって帰国しました。その帰国の前に、娘にこう言ったそうです。

「どうして日本人は、すぐに”がんばれ!”と言うの⁉ わたしがこんなにがんばっているのに。会う人ごとに、わたしに向かって”がんばってね”と言う。わたしは最初、日本が好きだった。でも、わたしは日本人が嫌いになった。」

 

オーストラリア人の言う通りです。日本人は、「がんばれ!」以外に、人に向かって言う言葉を知らないようです。

 

「では、オーストラリアであれば、どんなふうに言うの?」娘は訊きました。

するとオーストラリアの女性は、日本語で教えてくれたそうです。

「そう、たいていは”のんびりね” ”ゆっくりね”というのよ。」

 

”がんばれ!”を英語で言えば、”Do your best"になりそうです。

自分の能力の範囲で努力すればいいのです。ところが、日本語の”がんばれ!”には、その人の能力は問題にされていません。

企業のほうから社員に向かって”がんばれ!”と言うとき、社員は自分の能力以上に、企業の期待に応えることが要求されています。

とても残酷な言葉だと思います。

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はたらく目的は何でしょうか?

いま誰のためにはたらいていますか?

 

わたしはこの問いを長年考えずに働いていました。

そして、カナダから帰った6年前から考えはじめ、ずっと考えていましたが、満足できる答えは得られませんでした。

 

この問いから解放された今は、充実しています。

がんばらなくてもいいんです。

答えもクリアです。

これからは、自分のため、家族のため、世の中の人のために”はたらく”のです。

世間に期待せず、自分にできることをやるのです。

 

現代社会には無理があります。

無理な中期計画や年度予算が決して実現できないように、この世の中の無理は続きません。

それに多くの人が気づいていて、世の中は変わり始めています。

だから期待しなくても、自分がその流れに沿って、毎日を丁寧に過ごせば、世の中はきっとよくなっていくのです。

 

「がんばる」という言葉は、江戸時代からみられるようです。

きっとこれからは、「がんばる」に代わって、ステキな言葉が生まれてくるかもしれません。

「そのまんまでいる」から「まんまる」ってどうかな?