味わいことばノート 171&172 生身かどうか - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』
の続きです。
『生きる言葉』(俵万智著 新潮新書)から引用します。
------------------------------------------------
その後、中学2年生から、縁あって沖縄の石垣島に住むようになったのだが、
いつのまにか息子は、ゲームをしなくなった。
「そういえば最近、全然ゲームしないね」と言うと、
おやつ以上にうまい答えが返ってきた。
「だってお母さん、オレが今マリオなんだよ!」。
「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ。
大自然の中で、友だちと一緒に暗くなるまで遊びほうける日々、
滝つぼに飛び込み、海で釣りをし、サトウキビ畑で鬼ごっこ。
その冒険は、
まさに自分自身がゲームの主人公になったような気分だったのだろう。
五感をフルに活用することは、言葉を鍛える土台のようなものではないか、
と思う。
「めいっぱい遊ぶ」ことは、机の上の勉強と同じくらい、
いや大人になってからは出来ないという意味では、勉強以上に大事なことだ。
息子は、石垣島でもやや辺鄙なところにある
全校児童十数名の小学校に通っていた。
クラスは複式学級で、いわゆる学習面では若干の不安はあったものの、
それを上回る魅力があったので移住を決めた。
魅力とは三つ。
圧倒的な自然と、みんなで子育てする地域社会と、
子どもだけで野放図に遊べる環境だ。
都会での子育てで、懸命に努力して補ってきた三つだが
(そしてなかなか足りていないという実感があった)、
石垣島ではやすやすと手に入る。
お勉強のほうは、自分が補ってやればいい。
そっちはむしろ得意だという自負もあった。
学習面では....などと失礼なことをいってしまったが、
島の子どもたちの知恵には、目を見張るものがあった。
道を歩いていると、食べられる草、食べられない草、
ヤギが大好きな草などを教えてくれる。
近所にスーパーがなかったので、
私自身、長命草(という食べられる草)にはずいぶん助けられた。
魚は見事にさばくし、釣りに行くときには「弓張り月」なんて言葉を使って、
潮の満ち引きを考えている。
大きな魚を捕らまえあt少女は、暴れる大物の背骨を足で踏んで折っていた。
鮮度を保ったままおとなしくさせるのだとか。
児童の数が少ないので、必然的に年齢の違う子どもが一緒に遊ぶことになる。
たとえば鬼ごっこの時には、「1年生には2回続けてタッチしない」など、
独自のルールを話し合って決めていた。
ヤドカリに息を吹きかけて、次々に貝殻から追い出す遊びに熱中していると、
「本当にほしい貝だけにしといてやれ」と、にいにいいが諭す。
親に命の大切さを説かれるより、ずっと効くようだった。
===========================
正直これを読むと、心が清々しくなります。
この子たち、やるなぁ!
この上ない子ども時代を満喫しているなぁ!
正直、これも体験格差につながるなぁって思いますが、
せっかくのいい気分になっているので、それは横に置いておきます。
異年齢の子どもたちが一緒に遊ぶところに学びは多いですね。
ヤドカリの遊びは、一種残酷な遊びで、
小さいころにはただ単におもしろいからということでやっています。
まだ分別のない時期ですから。
しかし、そこに年長の子がいると、その子も年長の子から言われたのか、
あるときヤドカリがかわいそうだと気づいたのか、理由はさておき、
自分終えたものをベースに、年少のヤドカリをいじめている子どもたちに、
さりげなく一言二言話すのです。
それも遊びの一環として。
これが子どもたちの遊びからのかけがえのない学びではないか!
そう感じますね。
「遊びほうける」という言葉があります。
まさにそれが、
息子に「オレが今マリオなんだよ!」と言わしめていることなんですね。
ゲームやスマホより楽しいことが、自然の中にはあります。
【学びの散歩道】子どもたちの将来は大丈夫なのだろうか?(142) 子どもがスマホばかり見ています - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』
ここでいう「スマホより楽しいこと」が石垣島にはあったわけです。
でも、なにも、石垣島に限ったことではありませんね。
私の仕事場である放課後子ども教室には、
この夏休みに、丸1日、それも毎日のようにいる子たちが何人もいます。
その子たちは、9時から17時の時間、スマホやゲームは一切やらず、
友だちと「遊びほうけて」いるのです。
その子たちは、日々こんなことをやっています。
----------------------------------------------------
お絵かき、おりがみ、おりがみ、あやとり
ミサンガ(3つ編み・4つ編み)つくり
積み木 ジェンガ、ドミノ、けん玉、逆さコマ、ぼーずめくり、カルタ
ルービックキューブ、ドブル、ラQ、ラQコマ回し、オセロ、将棋、マンカラ
UNO、トランプ、カードゲーム、ボードゲーム、黒ヒゲ、すごろく
レゴ、ブロック(大)、ブロック(小)、軟ブロック(Wammy)
パズル(平面)、パズル(立体)、本読み
時々工作(風鈴つくり、カレンダーつくりなど)
そして、あるもので自分たちで遊びを作ります。
特に4年生女子たちは、
なんだかかわいいキャラつくりのお絵かきに一日中没頭したり、
そのあとは、今日もそうですが、男子も加わって、
あやとりがブームになっていたり、
そこにあるパズルは全部やったりしています。
1~5年生がまんべんなくいるので、多年齢が混じって遊んだりもします。
ここのいる時間は、スマホやゲームは一切しないけど、
家で制限されているということはあっても、
スマホやゲームより楽しいことが、ここにはあるからだろうと思います。
これ、すごいことだな、と最近感じています。
今晩、モリタウンのトイザらスに行きました。
いまどきのチャラいものしか売っていないので、好きなお店ではありませんが、
手近で買えるのは、こういうところしかありません。
イマイチ、いいパズルはないなあと思いましたが、
その中では、自分でベストと思えるものを買いました。
明日、すぐに、子どもたちは発見してのめり込むでしょう。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
手元にあった写真を適当に貼っています。