【学びの時間】いじめについて考える③ いじめは起こることを前提に考える

「いじめゼロ」ということがよく言われるけれど、

それは明らかにおかしいスローガンであり目標だと言える。

本来の目的は、子どもたちを守るということだと思うのに、

表面上の数字を目標にしてしまうと、見えにくいものがより見えなくなる。

" いじめゼロ " で検索すると、こんなものが出てきた。

「いじめゼロ」宣言は、いじめを温存する――「虐待ゼロ」「体罰ゼロ」 教育の世界にあふれるゼロ信仰(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

ある環境では、どんな状況でもいじめは起こる。

このことは、さかなクンがよく知っている。

” さかなクン いじめ " で検索すると、

朝日新聞の記事「広い海へ出てみよう」がでてくるが、

私も以前、別のソースでこのことを知り、ブログに書いたことがある。

彼は、自分がいじめられたこともあるし、

いじめられた子に、ただただ寄り添うことができるのである。

大脳新皮質シンドローム② - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)

 

『いじめを本気でなくすには』(阿部泰尚著 角川書店)で、

著者は、こう願っている。

---------------------------------------

私が介入するレベルのいじめの場合、加害者の親はまず謝らない。

ひたすらわが子の弁護をして、

学校や被害者に有形無形の圧力をかけてくる人間がほとんどだ。

スポーツでもディベートでもないのに、なぜか「勝とう」としてくる。

厳しいいい方になるが、

子どもが大問題に発展するようないじめの加害者になった時点で、

そこまでの子育てに何かしら問題があったのだ。

 

しかし、子育ては長い。

子が無事に成人するまで家庭教育は続けなければならない。

その子育てをどう軌道修正していくか、真剣に考えてほしい。

原因は一つではないし、瞬間的に成功に切り替わるはずもない。

長い時間をかけて少しずつ、子どもとの信頼関係を積み上げていってほしい。

-----------------------------------------

 

いじめが起こったとき、加害者となった子、被害者となった子たちがいる。

なぜ、それは起こったのか?

その子たちの生い立ちや置かれた環境が積み重なって、

いじめという形で現れてきたのであろう。

だからこそ、それが癒されるまでには、並大抵ではない時間と労力がかかる。

そのことを、しっかり認識しておく必要がる。

それを支える大人には、心身に大きな負担がかかり、

またそれが、長く続いていくはずだ。

私には、いじめ対応の経験は乏しいが、別の形で、一旦こじれると、

それを修復していくには、はてしない時間がかかかるということは、

身に染みてよくわかる。

 

それがたやすいものではないことについて、著者はこう言っている。

--------------------------------------------

私から先生に二つのことをお願いしたい。

一つは、被害者を必ず守ってもらいたいということだ。

私は、ここに命をかけている。

一緒に泣き、一緒に考えるだけでいい。

守るという態度を見せられた子どもたちは、それだけで精神的苦痛が和らぐ。

最悪の事態を防げるのだ。

教え子に自死されて平気な教師などいるはずがない。

命だけは、何があっても守る。そんな気概をもって問題にあたってほしい。

 

もう一つは、

加害者を真っ当な人間に戻すための教育をしてほしいということだ。

いじめは加害者の人生にも大きな影響を及ぼす。

彼らもまた、救わなければいけない対象だ。

そして、教師がしっかりとした対応を見せることで、

傍観者となった多くの子どもたちの学びともなる。

---------------------------------------------

 

そんな大変な「いじめ」に、本気で取り組んでいる人もいる。

足立区立辰沼小学校の校長をされていた仲野繁という人のことが、

この本で紹介されていたので、まとめてみるとこうなる。

 

---------------------------------

仲野氏は「いじめの対策は解決より防止が重要だ」と明言する。

いじめは大人からは見えないことが少なくない。

しかし、これまでのいじめ対策は、大人の「気づき」を前提としていた。

これでは限界がある。

子どもたち自身が能動的・主体的に取り組める仕組みづくりをするのが、

最も効果的だ。

  • 人間の行動を決める要素:「ルール」「モラル」「環境」なかで、最も重要なのが「環境」である。
  • いじめを取り巻く環境は、「被害者」「加害者」「加担者」「傍観者」「防止者」「無関係者」の6つの立場がつくる。
  • そうであれば、「防止者」を増やすことが「事前防止」に大いに役立つ。
  • 「防止者」をつくる仕組みを考えるのが教師の役割。
  • 教員をはじめとする大人たちは、サポートと同時に、正義が暴走しないように適宜介入することが重要。
  • 子育てがそうであるように、教員もキッズレスキューに関わることで、教育者として学びと成長を得ていく。

----------------------------------

 

ここに「キッズレスキュー」という言葉がでている。

これについては、もう少し詳しく見てみる必要があるため、

次回のブログで、さらに学びを深め、考えていきたいと思っている。

 

さかなクンの言う狭い水槽が学校だとすれば、

広い海ってどんなところなんだろう?

 

どんな問題でも、それを解決するには、

本質を見る力と目的を見失わない力が大事だと思っている。

今回の学びから見えてきたのは、いじめも同じだと思えるのである。

 

つづく

 

f:id:solcafe:20220320205530j:plain

写真に意味はありませんが、

リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、

散歩中に撮った写真を適当に貼っています。