【味わいことばノート】80
『ラストレター』(さだまさし著 朝日文庫)より
ラジオ番組のあるラスト・レター
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オリンピックで思い出すのは、1964年の東京大会です。10歳の秋でした。
父は、夏は氷、冬は炭や練炭などを商う小さな燃料店を営んでいましたが、
決して暮らしは楽ではありませんでした。
それでも子供たちのために、
父はオリンピックに間に合わせてテレビを買おうとしてくれたのです。
私は3人兄妹の末っ子でした。
夏前から、家族揃って一日おきに銭湯に通う時、
町の電気店のショーウィンドウを覗いては、飾ってある新型のテレビを眺め、
あと3か月で買えるぞ、あと2か月で買える、
と指を折りながら、みんなでワクワクしたものです。
いよいよ今月買えるということになり、電気店に出かけると、
私たちがいつも憧れていた新型テレビは売り切れていました。
それから注文しましたが、
結局、オリンピックの放送には間に合いませんでした。
あの日、もっと早く頼めばよかったねえ、と肩を落とした父に、
炭に汚れて爪の中まで真っ黒だった手を私は思わずぎゅっと握りしめました。
父が照れたように私の頭をなでてくれたのを覚えています。
今は何でも手に入る世の中になりましたね。
分不相応と知りながら効果になものをクレジットで手に入れる生活に、
すっかり慣れてしまいました。
豊かになる、とはどう言う意味なのでしょうか?
貧しかったけれども幸せだった我が家。
次の東京オリンピックをこの国はどんなふうな幸せの形で迎えるのでしょう?
オリンピックと聞くと、
私はいつも父の真っ黒に汚れた温かくて懐かしい指先を思い出します。
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【味わいことばノート】81
『斎藤一人 奇跡のバイブル』(舛岡はなゑ著 PHP研究所)より
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ゆるせないままでは、ゆるされない。
それでも「あの人のことがゆるせないんです」って、ずっと言っている人は、
いま、自分は過去に自分が蒔いた種を刈り取っているだけなんだ、
ということを知らないだけなの。
他人の悪口をずーっと言っている人は、相手のことをゆるせないんだよね。
なぜ、ゆるせないのかというと、
「その人が自分に悪いことをしたからだ」、そう思ってるよね。
前の人生で自分がやったことが、いま自分に返ってきているんだよ。
いま、自分がやられていることは、前に自分がやったことだ。
だから、たとえば、いま、自分の悪口をいう人がいるとする。
そのときは、たとえばいまこう考える。
こんな嫌な思いを、自分も昔、誰かにされていたんだな。
そのことを、この人は自分に教えてくれたんだ。
そうやって、相手を憎まない。ゆるしてあげるの。
ガマンをしなさいと言っているんじゃないんだよ。
ガマンからはうらみしか生まれない。
それではまた因果を積んでしまう。
いやなことをする人間とは、距離をとればいい。
会いたくなきゃ、会わないほうがいい。
会社をやめてもいいし、無理につき合うこともない。
もし、相手の人に理不尽なことを言われたり、不当な扱いをされたら、
「やめてください」って言わなきゃいけないこともあるの。
それでも、どうしてもゆるせない人と離れられないときは、
愚痴、悪口を決して言わないことに挑戦するの。
それが、「ゆるす」ってことなの。
そうすると魂が成長する。
神さまがすべてを解決してくれる。
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