【学びの散歩道】哀愁、そして鑑賞と観賞

これまで慣れ親しんできたことを、もっともっと大切にしませんか。


『あなたの「眠っていた力」が目を覚ます生き方』

(野口嘉則著 サンマーク文庫)より

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今から20年前のこと、ある全国紙の投稿欄に、

一人の若い母親からの投稿が掲載されました。

「子どもを寝かしつけようとして子守唄を聞かせたら、

子どもは眠るどころか、逆にむずかり始めました。

そして、布団に潜り込んで拒否官能を示しました」という、

困惑を訴える投稿でした。

そしてその翌日から、その新聞社に、

同じ悩みを訴える母親の投稿が、全国から殺到したのです。

 

この現象の原因はすぐにはわからなかったのですが、

翌年になって、ひとりの作家が次のような考えを発表しました。

山折哲雄(宗教学者)さんのお話からすると、

おおよそ次のような内容だったようです。

 

「生まれた子どもたちは、どんな環境で育つのか。

それを調べてみると、

今の子どもたちはテレビの音を長時間聞いていたことがわかった。

そして、そのテレビから聞こえてくる音楽と言えば、

朝から晩まで流れているCMの音楽だ。

このCMの音楽は、明るい曲、陽音階の曲ばかりで、

短音階(マイナー)、短調、陰音階の曲がほとんどない。

つまり悲哀のメロディーに触れる機会が少なく、

その結果、それに対する拒否反応を示すようになる」

当時、これを読んだ山折さんは、

「これは恐るべきことではないか」と直感したそうです。

 

さらに山折さんが調べてみると、

幼児教育や小学校の低学年教育の音楽教材から、

『五木の子守唄』『竹田の子守唄』『島原の子守唄』など、

悲哀感のあふれる歌詞とメロディーを特徴とする

子守唄がすべて姿を消していました。

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今の世の中には、陽はよきこと、

陰は悪しきこと、忌むべきことというような風潮があるように思えます。

どこもかしこも日の当たる場所だったら生きていけません。

陰も陽もバランスが保たれる場にこそ、人間本来の営みがあると思います。

 

※思考の寄り道

 以前にこんな「きりがみリース」も作ったことがあります。



『本を読むだけで脳は若返る』(川島隆太著 PHP新書)より

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私たちの実験データに基づいていえば、

毎日10分の読み聞かせの時間をつくると、

確実に親子の愛着関係が強まり、子育てのストレスが減ります。

毎日が無理であれば、

まずは「週3日、毎回10分だけ」を目標とすればよいと思います。

それだけでも読み聞かせの効果が出るというのが、私たちの研究の結論です。

 

読み聞かせの場合は、文字の情報が親から子どもへと流れ、

また、子どもがその情報に反応して表情を変化させ、

その表情の変化が親にフィードバックされて、

さらに表現に工夫を加えて文字の情報を新たに子どもに伝えていきます。

読み聞かせでは、

親子間で情報のやり取りが密に行われていると考えられるのです。

 

一方、映像コンテンツの場合、

親子で観賞しながら同じように驚いたり笑ったりしたとしても、

親子間の情報のやり取りは基本的にはありません。

時間を共有していますが、コミュニケーションの密度がとても薄いのです。

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※雑学の寄り道

  • 「観賞」の意味は、見てそのものの良さを楽しむこと。例えば、「観賞用の植物」。
  • 「鑑賞」の意味は、芸術作品に接し理解して味わうこと。例えば、「美術館で絵画を鑑賞する」。
  • 「テレビかんしょう」と言う場合には、一般に「観賞」を用いる。テレビで放映されるものは芸術性を重視した作品よりも、日常的に楽しむような娯楽作品が多いのが理由。

観るコンテンツが鑑賞する内容であれば、

それぞれ味わうものが違ってコミュニケーションが生まれるともいえますね。

「読み聞かせ」は、親子間に相互の情報や感情の流れが起こるので、

2人で、本、その物語を鑑賞しているということでもあるのかなとも思えます。

 

上の写真の陰陽のきりがみリースは、こんなになりました。

「きりがみリース&きりくずアート」 1月のカレンダー - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)

 

スマホを横に、いや遠くに置いて、

昔からあるものを楽しむ時間、アナログの時間をもちませんか。

哀愁の歌、本の読み聞かせ、.......、なんでもOKです。

私にとってのそれは、「きりがみ&きりくずアート」なんです。