【学びの時間。感じる時間】白いご飯しか食べないタロウ

10月17日に、お隣の神奈川県の中学校でドリームマップ授業をやってきました。

今回も色々ありました。

ひとりひとりが、ある意味自分の人生を背負っています。

ただ、その背景には、親を始め、

その子をとりまいてきた大人や友だちがいるのです。

 

今日は、放課後子ども教室のお仕事をしてきました。

小学校低学年の子どもたちも、一人一人、自分の人生を背負っています。

ただそこには、親ガチャ、どんな親の元に生まれたかが、

その子にとって、どうしようもなく大きいことである、

と改めて感じさせることがありました。

子どもは、家庭の事情を話してくれるからです。

 

私にとって、学校のドリームマップをやってきたことは、

かけがえなく大きなものだと思います。

先日読んでメモした以下のことが、

ドリームマップをやっていることの意味に通じるなと感じています。

 

『生きにくい子どもたち』(岩宮恵子著 岩波現代文庫)より

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極端な偏食で、白いご飯しか食べないタロウがいる。

3年生の夏休みに、以前からほしかった犬を飼い始めた。

散歩の途中で、同じように犬を連れて散歩していた

かなりの年齢のおじいさんと知り合いになった。

 

「年をとってお迎えの時期が近づいてきたのか、

以前ほどいろいろなものが食べられなくなってきた。

今は、白いご飯しか、おいしいと思えない」

 

「ぼくも白いご飯しか食べないのです」

 

「ご飯はおいしいからなあ」

とおじいさんは言ったのだった。

 

その言葉は、タロウに大きな衝撃を与えた。

いままでタロウにとって、ご飯しか食べられないということは、

負い目のあることでしかなく、

ご飯がおいしいからご飯だけ食べているという発想はなかったからだ。

しかし、そのおじいさんと話しているうちに、

自分はご飯が好きなんだということを実感するようになったのだった。

新学期になり、夏休みとは散歩の時間帯が変わってしまったので、

そのおじいさんと会うことはもうなくなったが、

不思議なことに、

タロウは徐々にいろいろなものが食べられるようになっていった。

 

食べ物を無理やり食べさせる、ということだけにこだわるような関りはやめて、

子どもの心全体が自然に育っていけるような環境をつくることに、

心をくだくことが、

意味ある偶然の出来事を活かしていく大切な地域づくりになるということである。

 

ここで、ひとつ、親がはまってしまいやすい、

むなしいパターンを紹介しておこう。

それは、たとえば、

「お前の言うとおり犬を飼ってやるから、ちゃんといろいろなものを、

食べるようにしろ」

というように、表面に出ている問題を単純に解決しようとして、

交換条件を提示する、というものである。

そうすると、子どもは自分の希望をかなえてもらいたい一心で、

「ちゃんと食べるから」と言うものである。

しかし、なかなかその通りに食べられることはないので、

約束を守らない子どもと怒るはめになる。

犬の世話をちゃんとしないことを怒るのなら意味もあるのかもしれないが、

無理な交換条件の結果を怒っても仕方がない。

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ドリームマップは、何を言うか、どうやるかではなく、

なぜそれをするのかが、いちばん大事なんだと思います。

そうだからこそ、毎回毎回、そこにいる子どもたちと、

しっかり向き合うことが大事なんです。

みんな違うから、同じ言葉だけでは通じない、そう思っています。

そのためには、自分のあり方が大事、そう感じています。