`「いまどきのの若者は本を読まない」
これは、そうとも言えるし、そうではないとも言えます。
だいたい、昔は本を読んでいたのでしょうか?
私自身、小中学生の頃、本はそれなりに読んではいたものの、
そんなにしっかり読んでいたという記憶はありません。
確かに、当時ゲームもスマホはありませんでした。
その意味では、いまどきの子どもや若者は、
本を読む以外の誘惑が、けた外れに大きいと言えるでしょう。
しかし、私の子ども時代もテレビはありました。
高校時代、ラジオの深夜放送を聴いていた記憶があります。
『若者の読書離れというウソ』(飯田一史著 平凡社新書)には、
多くのデータをもとに、読書というものについての考察がなされています。
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1980年代から1990年代にかけては、いわゆる「本離れ」が進み、
1990年代末に、平均読書冊数と不読率は史上最悪の数字となる。
しかし、2000年代には、どちらもV字回復を遂げ、2010年代になると、
平均読書冊数は、小学生は史上最高を更新、中学生は増加傾向を続け、
高校は横ばいだか、過去に比べて「本離れが進行している」とは言えない。
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というこのようです。
それは、文部省の政策によるものだったようです。
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- 1993年に文部省が学校図書館を必要とする教育への転換(「調べ学習」開始)、「学校図書館標準」と「学校図書館図書整備新五か年計画」を策定、予算をつけた。
- 1997年に、学校図書館法を改正して、司書教諭の原則配置を実現。
- 2000年を「子ども読書年」として官民あげてイベントを行った。
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なるほどなって思います。
読書はするようになりましたが、雑誌は読まなくなったようです。
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- 書籍の読書に関するV字回復とは対照的に、「雑誌」の不読率や平均読書冊数減少には歯止めがかかっていない。
- 2000年代以降の読書推進活動によって、小中学生は書籍を読むようになったが、雑誌を読まなくなった。
- つまり書籍と雑誌の割合が変わっただけで、トータルとしてみると、本(出版物)の読書冊数は増えていない。
- 子どもの「読書離れ」と言われた80~90年代にも雑誌は大量に読まれていた。
- 90年代には、「週刊少年ジャンプ」などのマンガ雑誌が歴代最高発行部数を更新していた。
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小中高生に対して、大学生は本を読まなくなっているようです。
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大学生の不読率が大幅に上昇。
- 「大学生が本を読まなくなっている」のか「
- 本を読まない層が大学生になっている」のか。
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確かに、昔に比べて、大学進学率は大幅に上昇しています。
その他このような興味深いデータがあります。
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- 高校生の不読率 49.8%(学校調査) 56.5%(東大&ベネッセ調査)
- 大学生の不読率 50.5% (学生生活実態調査)
- 日本人全体の不読率 47.3% 文化庁「国語に難する世論調査」(平成30年度)
- 児童書市場は少子化にもかかわらず堅調。
- ひとりあたり販売額は、1990年代末からほぼ倍増。
- 「中高生向け」をやめた文庫ラノベ(ライトノベル)市場は、2012年をピークに半分以下に減少。
- ネットやスマホが登場するなど、環境が変化しても、高校生以上の書籍の不読率や読書量は大きく変わらない。
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結局、人間が文字を読むという行動は、今も昔も変わらずあるということで、
媒体の比率が変わってきているだけのようです。
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- 「読書量は遺伝的な影響のほうが、共有環境から受ける影響よりも大きい」という行動遺伝子学の研究から整合的に説明ができる。
- ネットやスマホに代替されてプレゼンスを下げてきたのは、即時性はビジュアル的な要素が強い「雑誌」。
- 「書籍」の需要は、紙+電子で、2021年には1兆円を超えており、これはピークとされる1996年、1997年の書籍の市場に匹敵するくらい今も根強い。
- TikTokで話題になった本は、もともと学校読書調査で上位にあった作品・作家であるものが大半。
- TikTokでの本紹介動画の影響は、高校生女子の買う、読む本の選択の偏りに拍車をかけたとは言えそうだが、中学生や高校生全体の読書量を押し上げたとは言えない。
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この文脈から言えることは、若者の読書離れというより、
大人の読書離れのほうが問題ではないかということです。
今の私は、本を読むのが好きです。
これは今借りている本ですが、たまたま小説が多いです。
でも、今日孫娘がやってきてしばらくいるのと、
12日のきりがみアートの準備で、なかなか読めそうにないですね。