最近、ちょっと重たい本を何冊か読んでいます。
その一つが『反貧困』『湯浅誠著 岩波新書 2008年出版)です。
一億総中流という時代もありましたが、いまの日本は、
不寛容な格差社会と言ってもいいでしょう。
あまりにも過酷で無慈悲な現実があった(ある)ということが、
この中には多く書かれています。
その一つがこれです。
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2007年5月、31歳の男性の生活保護申請に同行したら、
対応した福祉事務所職員が、
「私にも同じ年齢の子どもがいるけど、うちの子は働いているわよ」
と言った。
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勝手なことを言わせてもらうと、自治体の福祉関係の職員は、
やらねばならない仕事としてやっているはずです。
たまたま、福祉業務に配属されただけで、
「不幸な人たちをなんとか救いたい」
そんな高い志を持って、仕事をしている人はどれだけいるでしょうか?
そうであれば、こんな言葉が出るはずもありません。
多くの人は、そんなことはないと思いますが、
この本を読む限り、日本のあちこちで、受け入れるどころか、
追い払うケースが多いという、悲しい状況があったようです。
私も含めて、幸いにも貧困に無縁で生きてきた人たちは、
貧困にあえぐ人は、自己責任の結果だと思いがちです。
だから、そんな人たちを公助する人が、
「自助でなんとかしろ」、そう思うのでしょうか?
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「すべり台社会」の中で足を滑らした多くの人たちが、
いま貧困状態に立ち至っている。
(平成18年度国民生活基礎調査の概況)
- 年間通じて働いているのに、年収200万円未満が、1,000万人超。
- 高齢者、無職を含めると、所得の最も低い20%の人たちの平均年収が、119万円。
- 年収200万円未満が総数4,752万世帯の18.9%の898万世帯ある。
- 高齢者では、無収入の人が5.3%、月収10万円未満が40.0%に達する。
- 子どもの貧困率は、ユニセフの2005年度調査でOECD加盟国24か国中1-番目に高い14.3%。1990年代を通じて23%上昇した。
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一方で、こんな状況もあるのです。
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経済アナリストの森永卓郎氏(日経BPコラム 2007年)
「日本では2002年1月から、景気回復が始まり、名目GDPが14兆円増える一方、
雇用者報酬は5兆円減った。
だが、大企業の役員報酬は、一人当たり5年間で84%も増えている。
また株主への配当は、2.6倍になっている。
ということは、パイが増える中で、人件費を抑制して、
株主と大企業の役員たちが手取りを増やしたのだ」
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経済的貧困は、心の貧困も生み出します。
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「児童虐待を本当になくそうとするならば、
真っすぐに原因に向かわなければならない。
それは、「児童虐待やネグレクトを減らすためには、
少なくとも、貧困ラインの上まで家族の収入を増やす」ことだ。
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つづく