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『小さなまちの奇跡の図書館』(猪谷千春著 ちくまプリマー新書)
を読んで、たかが図書館、されど図書館、
いや、「生きていることをを感じる居場所」だと感じました。
そう感じたのは、この「ものがたり」にあります。
そのままの引用ではなく、端折って書き出しています。
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下吹越(しもひごし)さんは、旅先で階段から転落し、脊髄圧迫骨折をした。
入院して完全に寝たきりになった。
当時、下吹越さんは「文芸いぶすき」の校正作業に追われていた。
隣の寝たきりの校レ女性が話しかけてきた。
「どんなことがかいてあるの?」
「読もうか?」
「うん、読んでごらん」
「いいねぇ、指宿の人がそんなことを思ってるんだね」
高齢女性が部屋を替わるとき、こう伝えた。
「あんたが毎日読んでくれたおはなしのおかげで、寝たきりも辛くなかったよ。
ありがとうねぇ。あんたの声はいいねぇ。
むかしむかし、おっかさんにはなしてもろた時のごつあった。
また会うがね。がんばんなさいよ」
その後、下吹越さんは回復し、歩けるようになった。
今度は本を抱えて、あちこちの病室を訪ねて朗読するようになった。
病院中で評判になり、コンクリートの壁のようなギブスを身体に巻いたまま、
いろんな部屋に招かれて語った。
入院していた人たちは、下吹越さんの朗読に笑ったり、
考えたりしながら、会話が増えていった。
寝たきりで死んだような目をしていた高齢者が笑うようになり、
下吹越さんが帰った後も病室で会話が弾むようになったのだという。
下吹越さんは、指宿図書館から団体貸し出しをして本を持ち込み、
ついには病院に「病室文庫」をつくってしまった。
すると本を持って行って自分の部屋で読む人が続出。
看護師さんたちからも「病室が明るくなった」と言われるようになった。
図書館の本を持ってきてもらい、
お昼ご飯のあとや夕飯のあとに廊下で折り紙教室を開催した。
廊下に笑い声が溢れ、看護師さんやドクターが何事かと部屋から首を出した。
下吹越さんは友人に見舞いは折り紙がいいとお願いし、
来る日も来る日も折り紙教室を続けた。
すると、それまで不自由だった指が動くようになるおばあちゃんが出てきた。
動かなかった右足も動くようになった。
そのうわさを聞きつけ、よその脳外科でリハビリ中だった人たちが、
リハビリと折り紙に通うようになった。
退院する前日には、ピアノ伴奏をしてくれる友人を呼んで、
ホールでピアノ伴奏付き朗読や絵本の読み聞かせをした。
最後にみんなで童謡を合唱した。
下吹越さんが退院する前日、看護師長がこういう声をかけてくれたという。
「どんなに薬や医療が進歩しても、
人が自ら自分の病を治そうとする気持ちがなければ、病気は癒えないのよ。
本当は、こういうことが病院にはとても必要なジャンルだと思うのよ。
これからも時々来てくれない?」
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もう一つあります。
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2018年9月指宿駅前でブックカフェ号(移動図書館)が
「開館」していたときのことだ。
詩集を読んできた高齢の男性が、下吹越(しもひごし)さんに声をかけてきた。
「あなたはすごいね。このブックカフェを形にして。
みんなあれやこれやしたいことはあっても動かない。
みんな声には出さないけど、あなたのやってきたことはすごいと思っているよ」
男性はさらにこう続けた。
「僕は昭和20年代から30年代にかけてこのまちに住んでいて、
その後このまちを離れ、70歳になったときに帰ってきて、15年経つ。
沢山の人を見送ってきて、僕だけが生きている。
一人暮らしになると3日くらい誰とも話さないこともある。
たまに、友だちから電話が来て話そうとすると、
声帯が落ちて声を出そうとしてもなかなか声が出なかったりするんだ。
ひとは話さないと声が出なくなるんだ。
だから、海沿いを散歩して歩きながら、
アイウエオと声を出してみたりするんだ。
ここに来ると観光客と話したり、地元の人と話したりして、いいんだよ。
話しやすい場だからね。
いい場所を作ってくれてありがとう。
ここだと詩集とかがいいね。気楽に読めるから。
また来るよ。あなたに感謝してるよ」
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図書館という枠を超えた図書館の取り組みだと感じました。
図書館を多用する(借りて返すだけ)私だけに、
こんな図書館があることは、本当にステキなことだと思います。
この図書館にあるのは、これだけではないのです。
地域の人の居場所になっている図書館、
「ここいまタウン」にも必要なものだと思いました。
心豊かに生活できるコミュニティには、こんな図書館が必要です。
Facebookの「ここいまタウンをつくろう!」に、
” 人々が集い、つながるブックカフェ(図書館&カフェ)がある "
を加えることにします。
そして、i-xe(いーせ)の活動にもつながるものだと思うので、
メンバーにもシェアしたいと思っています。