『リトル ターン』(ブルック・ニューマン著 五木寛之訳 集英社)より
ぼくの話が終わると、彼は手短に言った。
「普通とか普通でないとかいう見方にとらわれている限り、
普通でないものは普通じゃないんだ」
「結局のところ」と彼は続けた。
「普通でないきみを受け入れるのに、
普通でないぼくほど適しているものはないだろう。
きっときみは、自分が知っていることに慣れすぎているんだよ。
きみはこれから、自分が知らないことを知る必要がある。
それだけのことさ」
ぼくはその言葉を黙って考えた。
やがて彼が言った。
「きみは飛ぶ能力を失ったんじゃない。
ただどこかに置き忘れただけだ」
「どういうこと?」ぼくはたずねた。
「物をなくすってことは、それが消滅することだ。
しかし置き忘れるっていうのは、消えることじゃない。
探しだすには、丹念に注意をはらって、
気づかなかったことに気づくことだよ」
「たとえばどんなことだい」
「何が真に重要かってことさ。
たとえばきみのコレクションだ。
きみが集めてるものの中で、何がほんとに重要で、
何がそうでないかに気づかなくっちゃ」