500ページを大きく超える小説2冊を続けて読みました。
一つは、シリアスなテーマ(精子バンク他)で
心理的に重い『夏物語』(川上未映子著)。
【感じる時間】すごい・しんどい・読んでよかった - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)
もう一つは、シリアスなテーマ(不登校)でありながら、
中高生向けに書かれたファンタシーの『かがみの孤城』(辻村深月著)。
そして、もう一冊の長編小説を読みました。
『悼む人』(天童荒太著 文藝春秋)です。
長さ的には、440ページと先の2冊よりは短いけど、
一番読むのに時間がかかっています。
現実にはありそうには思えない「悼む人」という存在を中心に、
他3人の物語が綴られていきます。
悼む人から発せられる言葉は、この著者の想いを表しているのでしょう。
- 「この人は誰に愛され、誰を愛したのでしょうか。どんなことで人から感謝されていたでしょうか」
そして、途中から「悼む人」に同行した女性の言葉があります。
- 「普通の主婦なんでいません。一般市民という人もいません.......特別な人が死んでいます。特別な人が殺されています」
簡単に忘れられていい人は世のなかに一人もいない、そういうことだと思います。
主人公の母巡子の言葉が響いてきます。
ふたつ書き出しました。
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静人は、変人とか不審者などと見られます。
人によっては不快に感じる場合もあるでしょう。
でもそれは、あの子と、そのように感じる人との間の問題で、
ほかの誰かが責任をとれることではないように思います。
肝心なのは、あなたに静人はどう映りましたか、
ということではないでしょうか。
蒔野さんがどう生きられようと、その理由より、人に何を残すかに、
蒔野さんの存在はある、と言い換えてもいいかもしれません。
ある人物の行動をあれこれ評価するより....その人との出会いで、
わたしは何を得たか、何が残ったのか、ということが大切だろうと思うんです。
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肺がんを患った巡子の母は、日々からだの自由が失われてゆくことに苦しんだ。
歩けなくなった、トイレに座れなくなった、起きられなくなった....
そのつど母は、もう生きていても仕方がないと嘆き、
周囲に当たり散らしては、自己嫌悪におちいった。
だから自分は、母が身をもって教えてくれたこととして、
失われてゆくものを嘆くより、残されているものをいつくしもうと思う。
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ウクライナの住宅が、ロシアのミサイル攻撃を受けて、
○○人死亡という記事が、連日のように伝えられます。
銃乱射事件も、アメリカで頻繁に起こります。
そして、今日本で話題になっている強盗殺人があります。
自動車が、児童の列に突っ込んだという事件もあります。
そして、日本の若者の死因のトップは自殺です。
若い世代の「死因トップが自殺」はG7で日本だけ : 未成年自殺率、最悪を更新 | nippon.com
ほかにも多くの人が亡くなっています。
どうでもいい死なんてないんです。
それをこの本は語ってくれています。