「貼り絵」と「はりえ」

今年の「きりがみアート」は「きりくずアート」でいってみようと思い

1月の矢川プラスに臨みました。

準備段階で思いついた、その試みの一つが「はりえ」でした。

【写真日記】11連休の最終日を飾る一日 - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)

ここに書いたように、手ごたえはあったと思います。

ひらがなで「はりえ」としたのは、

おもに小さな子どもたちとやると楽しいかなと思ったからです。

ところがふたを開けて見ると、こどもたちは、貼るより塗る感じで、

「はりえ」は大人の方々に受けました。

それは、ちぎり絵でした。

きりくずやパンチで抜いたものを使うと、

貼る形に合わせて色をそろえるのが大変なので、

きりくずよりもおりがみを使っていました。

さもありなん、という感じです。

それはそれでよしですね。

 

その「貼り絵」というか「ちぎり絵」には、

大先輩の巨匠がいたのです。

 

私は、現在に至るまで、まったくの芸術音痴で通してきました。

音楽もほとんど聞かないし、美術館にも行きません。

それは、あまり関心がなかったからです。

興味のないことには無頓着なので、

山下清も、名前と「裸の大将」、吃音という知識だけで、

作品も映画も見たことがなく、

何をしていた人かもはっきり知りませんでした。

教室の後ろに貼っていたこれらの作品を見たスタッフのひとりから、

「山下清」の名前を聞きました。

そこで早速、図書館で本を借りてみることにしました。

それがこれです。

 

『あるがままの自分に正直に活きよ』(山下浩監修 別冊太陽)の

山下清の言葉を二つ引用します。

------------------------------------

みんなが爆弾なんかつくらないで、きれいな花火ばかりつくっていたら。

きっと戦争なんか起きなかったんだな。

------------------------------------

ぼくは、放浪している時、絵を描くために歩き回っているのではなく、

きれいな景色やめずらしい物を見るのが好きで歩いている。

貼り絵は、帰ってからゆっくり思い出して描くことができた。

------------------------------------

 

人々に感動を与え、有名になった山下清でしたが、

知られ始めた当初は、理不尽な評価にさらされました。

大衆からの熱烈な支持と専門家からの黙殺という

二重の評価の間で翻弄され続けたのです。

 

あの文芸評論家の小林秀雄の見下したような評価がありました。

--------------------------------

「山下の作品がもつ独特の魅力を、山下の知的な障害ゆえのもので、

芸術的価値に乏しいと結論付けた」

-------------------------------

この記述を見て驚くとともに、とても残念に思った。

 

それでも専門家の中にも、心ある人はいました。

------------------------------

はじめから人を驚かすようなことを企んでいるのでもなく、

主義主張で描くのでもなく、只描いている....

一般の画家の絵とは大いに違うのである。

違っていてそのまま美しい。

柳宗悦(思想家)

-------------------------------
画壇人たちが求めた理屈、技法、流行などには、まるで眼中になく、

ただ自分の中にある美しい感動をひたすら、

自分の工夫によって表現しているから、新鮮で驚きと感動を覚えるのであろう。

安井曾太郎画伯

-------------------------------

 

山下清には、技巧という言葉はふさわしくないでしょう。

ほとばしる思いが、自然に動く手によって形になっていったのだと思います。

その結果が、高い完成度の作品なのです。

-------------------------------

数ミリの大きさに紙を切る場合でも、ハサミを使わず手でちぎる。

色紙を貼り合わせる場合、ハサミで切った紙の切り口はシャープになりすぎて、

貼り合わせた色の境い目が目立ってしまうが、

紙を手でちぎると切り口はやわらかくなり、

微妙な色の諧調が表現できたのである。

色のグラデーションを表現するときは、

細かく切った色の異なる紙を交互に貼り合わせていく。

実際の作品は、

紙をちぎったものとは思えないほどの完成度の高いものになっている。

清の色に対する固執は、風物を「きれいな情景を見る」という感覚よりも、

もっと深入りして「色で世界を感受していた」ため、

絵に独特の深さ、面白味、温か味を出していたのであろう。

--------------------------------

 

貼り絵の作品は、凄いとしか言いようがないです。

すごいエネルギーを感じます。

ただ、質の高い印刷でも、印刷物を見るだけではよくわからないというのが、

正直なところです。

現物を見る機会があれば、見てみたいと思います。

 

私自身、「きりがみ&きりくずアート」で何を目指すのか、

それは定かになっていません。

定かにする必要もないと思っています。

いまは、「はりえ」を含む「きりくずアート」をやっていくだけです。

「ただ、きりがみしている」を続けていければと思います。

 

1月8日の矢川プラスのあと、

「きりがみ&きりくずアート」にタッチできていません。

明日の日曜日も、お天気がよくなさそうなので、

2月4日に向けて、「きりがみ&きりくずアート」をやってみよう!

そう思っています。