田坂広志さんの「叡智の風」より
<味わいことばノート 121 「人生の成功」の定義>
アメリカの初等教育において、かならず子どもたちに教える言葉があります。
Define your own success.
あなた自身の「成功」を定義しなさい。
この言葉を聞くとき、我々は気がつきます。
この世に溢れる「勝者」や「勝ち組」という言葉の中で、
自分自身が定めた「成功」の基準ではなく、
社会通念が定めた「成功」の基準によって、
無意識に人生の道を選んでいく。
その我々の姿に、気がつきます。
しかし、そのことに気がつき、
自分自身の「成功」を定義しようとするとき、
我々は、さらに深い問題に突き当たります。
自分が本当に求めているものがわからない。
それゆえ、アメリカの初等教育においては、
先ほどの言葉とともに、かならずもう一つの言葉を教えるのでしょう。
Find your own uniqueness.
あなた自身の「個性」を発見しなさい。
すべては、深い「自己探求」から始まる。
この二つの言葉は、そのことを教えてくれるのです。
<味わいことばノート 122 「意欲」の新たな定義
何年か前、
ベンチャー・ビジネスに関するシンポジウムに出席したときのことです。
「なぜ日本では、ベンチャーが生まれないのか」
そのテーマをめぐる議論の中で、ある経営者が熱い口調でこう語りました。
みんなもっとハングリーになれば。
そうしなければ、日本にベンチャーは生まれないんですよ。
この言葉に大きくうなずく参加者の姿も少なくありませんでしたが、
その姿を見ながら、なぜか、別の想いが浮かんできました。
70年を超えて戦争のない平和な時代が続き、世界有数の経済力を誇る国、
最先端の科学技術を有し、高齢化社会が問題となるほど健康長寿に恵まれ、
国民の多くが高等教育を受ける国。
世界でも有数の豊かさを享受しているこの国で、
なぜ、我々は、いまもなお、ハングリーによってしか、
自ら行動に駆り立てることができないか。
その思いを抱くとき、我々は大切なことに気がつきます。
我々が心に抱く「意欲」には、二つの意欲がある。
一つは、「欠乏感」から生まれてくる意欲。
一つは、「感謝」から生まれてくる意欲。
その「感謝の意欲」によって、新たな事業に取り組む時代、
我々は、そうした時代こそ、切り拓いていかなければならないのでしょう。
写真に意味はありませんが、
リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、
手元にあった写真を適当に貼っています。