『つながり続けるこども食堂』(湯浅誠著 中央公論新社)より
味わい言葉ノート 112 「政治」
政治とは、「答えを出す」営みではない。
政治とは、人々がすでに出している答えを引き出し、汲み上げ、形にし、
地域と社会に投げ返すことを通じて、より多くの人たちが、目線を合わせて、
「答えを生きられる」状態をつくる営み、その条件を整える営み、
その意味での支援であり教育が「政治」だ、と私は思う。
味わい言葉ノート 113 「配慮」
今の多様性は、
配慮なき(あるいは配慮できない)多様性(Non-Inclusive Diversity)だ。
ここから早く、
配慮ある(あるいは配慮できる)多様性(Inclusive Diversity)
の段階に進む必要がある。
私はそれを、2020年代の時代的課題だと考えている。
「配慮がある」とは、たとえば、父はハワイに行きたい、
母は温泉に行きたい、姉はディズニーランドに行きたい、
自分はどこにも行きたくない、となったとき、
「みんなちがってみんないいから、じゃあバラバラで」とならないためには、
なぜ父はハワイに行きたいのか、なぜ母は温泉に行きたいのか、
その意向が相手のどこからどのように出てきているのかに
関心を寄せる必要がある。
そして尋ねた結果、母が温泉に行きたいのは、
年老いた祖母を連れていきたいのだとわかれば、
その母の理思いに共感した自分の想いを、父や姉に伝え、
各自の「そういうことなら、今回は温泉でいいか」
という理解と共感を引き出す必要がある。
これが、「みんなちがってみんないい」と
「共同性」を両立させるために必要な「配慮」だ。
ハワイか温泉かに「正解」はない。
帰ってきたときに「よかったね」とみんなで言い合えば、そこが正解だ。
それを「納得解」という。
納得解をつくるために欠かせないのが「配慮」だ。
※ 「inclusion」は、辞書では「包含、包括、算入」 「配慮」は意訳。