これは、この本から書きとったメモの一部です。
著者の林恭子さんは、16歳から20年間、ひきこもり、立ち直りかけ、
そしてまた、ひきこもりをくり返した経験のある方です。
この本からの引用です。
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「ひきこもりについて考える会」と、I (アイ)医師との出会いを経て、
30代後半に入ってまもなく、
「もしかしたら私でも、
この社会の好きまでなら生きていることができるかもしれない」
と思えるようになっていた。
16歳で不登校をしてから20年が経っていた。
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ひきこもりの状態について、私はこの図のように考えている。
仕事や学校に行ったり、家事や育児をこなして、いわゆる、
普通に暮らしている人々はゼロ地点より上の地上の世界で暮らしている。
この世界には太陽も照るし、星も見え、花も咲く。
だがひきこもっている状態というのは、
地下の土の中に「生き埋め」にされているようなものだ。
土の中で息ができない。苦しい。
私は焼かれるような熱さも感じていた。
その世界には、太陽は照らず、風も吹かず、真っ暗闇である。
息もできず、前も後ろも右も左もわからない暗闇の中で、
「なんとかしたい、でもそうしていいのかわからない」と
もがき苦しんでいるのが、ひきこもりの状態だ。
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地上の人は、こんなことを言います。
- みんな同じ、誰だって生きていれば辛いことはある。
- 朝起きたくないと思う日もある。
- でもみんな頑張っているんだよ。
- あなたたちは甘えている。怠けているだけだ。
- せめて朝起きよう。
- 今日は良い天気だから、せめて散歩でもしたら。
しかし、これは、地下の人たちには苦痛でしかないというのが、
ひきこもりで苦しみ続けた経験のある著者の言葉です。
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「この人は本当にわからないんだ.....」
考えてみれば、母の考えや感じ方があり、
私とは育ってきた時代も環境も違うのだから、
わかり合えるはずだし、わかってほしいと思っていたけれど、
それは無理なんだ、とようやく気づいたのだ。
もともと別の人格をもった人間同士なのだからそれでいいのだと。
のちにある親御さんから、”「あきらめる」というのは、
「あきらかに見極める」ということよ、よかったわね” と言われ腑に落ちた。
それからは母にわかってわかってと要求するのはやめて、
本当に自分の人生を、これからのことを
考えていかなくてはいけないと思うようになった。
母も私から責められることがなくなったので、
少しほっとしたように、肩の力が向けたように見えた。
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著者はこれで立ち直ったのではなくて、これから先がまだ長かったのです。
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「よかれ」というのも愛情から出る言葉だと思うが、
これは怖い言葉だと思う。
親や支援者が「よかれ」と思ってやることは、
残念ながらよかったためしがない。
「よかれ」や「べき」と思ったら、まずそれを疑ってほしい。
” この子のために「よかれ」と思っている。
でも、この「よかれ」は、本当は誰のためだろう。
もしかして自分のためじゃないだろうか ”
と、一旦立ち止まってみてほしいのだ。
「よかれ」が怖いのは、
良いと思ってやることには歯止めがきかないからだ。
悪いことをしていると思っているときは、
「このへんでやめておこう」と考えるが、
良いことをしていると思うと、
もっと良いこと、さらによいこと、とキリがない。
そして気づけば、当事者の望みとは正反対のことを
長年にわたって押しつけるということが起こる。
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私には、ひきこもりの経験はありません。
だから、地上から見た意見を言いがちです。
この本は、地下の人の立場で書かれた本です。
当事者本人の言葉は重いのです。
ではどうしたら良いのか?
引用ではなく、まとめるとこうなります。
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ひきこもりの状態というのは、「ガソリンの入っていない車」のようなもの。
ガソリンの入っていない車を動かそうと、
外から働きかけてもそれは無理というものだ。
車にガソリンが必要であるように、
人もまずはエネルギーを貯める必要がある。
エネルギーとは、何かしら当事者にとってポジティブな出来事や声掛け。
安心感、理解、共感、好きなこと、心地よさ、うれしい、楽しい
当事者にとってネガティブな出来事や声かけがあると、
せっかく貯まったエネルギーは一気にゼロになる。
また一からやり直しである。
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これは、私にとって、身近なことでもあるのです。