〈Tip & Episode〉しつけの心得_しからないということ

「しつけの心得_待つということ」に続いて、同じ出典です。

 

【引用】出典:『続子どもへのまなざし』佐々木正美

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私もたくさんの注意欠陥多動性障害の子どもたちを診てきましたけれど、

あれだけ特性や症状がそろった子は、あまりいないと思うほどでした。

はじめて私の診察室にやってきたとき、

その子はいっときも、じっとしていられなかったのです。

私の机の上にあがって、でんぐり返りをした子なんてはじめてでした。

(中略)

 

私はその子の様子を両親に説明したあと、

「この子をしからないで育児ができたら、

問題はそれだけ早く解決すると思います。

あるいは改善すると思います」

といいました。

お父さんは

「こんな子をしからないでいられますか」

とおっしゃったんです。

(中略)

 

おとうさんは

「それはできないかもしれない」

といっていましたから、

私が

「お父さんがしからないでいられないのと、

この子がこういう症状をださないでいられなうことは同じことですよ。

ではどちらが先に我慢すればいいんですか。

お子さんのほうが先に我慢すれば、

お父さんも我慢できるようになるというのですか」

といいましたら、

「難しいことをおっしゃいますね」

なんて、お父さんはいっていました。

(中略)

 

そして、2週間後にお会いしました。

「この2週間に3回しか怒りませんでした」

と胸を張っておいでになりました。

とても率直ないいお父さんです。

その子は怒られる回数が減っただけで、

見違えるように変わっていました。

お父さんは

「しかって言い聞かせなかったら直らないと

思っていましたが、反対なんですね。

先生のおっしゃることは、そういうことかと分かりました」

と、そんなことをおっしゃっていました。

(中略)

 

注意欠陥多動性障害の子どもたちにかぎらず、

子どもたちに接するときには、単純に言いますと、

おだやかに注意し、くり返しいって聞かせる。

だけど基本的にはしからない。

そういう発想だけだと思うのです。

 

おだやかにいい聞かせるときに、

「それはしてはいけないよ」

と、こう伝えるだけでいいのです。

それをしばしば

「なぜそんなことをするんだ」

というような感情的ないい方を、

みなさんもしていませんか。

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このなかで、はっとさせられるのは、この言葉です。

「お父さんがしからないでいられないのと、

この子がこういう症状をださないでいられなうことは

同じことですよ」

 

私も含めて、たぶん多くの大人は、自分のことは棚に上げて、

子どもに接っしていることが多々あるようです。

 

だから、

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おだやかにいい聞かせるときに、

「それはしてはいけないよ」

と、こう伝えるだけでいいのです。

それをしばしば

「なぜそんなことをするんだ」

というような感情的ないい方を、

みなさんもしていませんか。

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という言葉を、忘れてはいけないのです。

それは、自分がされていやなことを、

子どもに対してしているということでもあるのです。

 

私も、学童保育で子どもたちに接しているときに、

できるだけしからないようにとは思っているのですが、

けっこう、そういうことはやめなさいという

いい方をしているときが多いことにも気づいています。

日々、おとなも成長していかなければいけないですね。

 

大人になるということは、勉強は終わった、

これでいいんだと思いがちですが、

自分が大人の立場で子どもに触れるということは、

これまでやってきたことのないことです。

私は、子どもの親であるはずで、孫ができる年齢でもあるのですが、

いま新鮮な気持ちで勉強中って感じです。

 

こんどは、そもそも「しつけとは何か?」について、

考えてみたいと思います。