【学びの散歩道】子どもたちの将来は大丈夫なのだろうか?(31) 子どもを支えるということ

『ちいさい・おおきい・つよい・よわい 「遊びの本質」』

(天野秀昭著 ジャパンマニシスト社)からは、

たくさんのメモを取っていますが、少し寄り道します。

 

『そこに、遊びがある授業』(安藤浩太著 東洋館出版社)に、

かのプラトンの教育に関する言葉が書かれていました。

紀元前400年前後に生きた人が、こんなことを言っているとは驚きです。

本質は、時代を超えて、同じなんだと思います。

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子どもたちを学習させながら育てるにあたって、

けっして無理強いを加えることなく、

むしろ自由に遊ばせるかたちをとらなければならない。

またそうしたほうが、それぞれの子どもの素質が何に向いているのかを、

よりよく見てとることができるだろう。

教育者は、子どもの快楽や欲望を、そういう遊戯を通じ、

彼らが大きくなればかかわりをもたねばならぬものへ、

さし向けるようにつとめねばならない。

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さらに『明日をつかむがっこう』(白井智子著 集英社)から引用します。

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ある日、ドリームプラネットという新しい学校ができることをテレビで知って、

会いに来た15歳の少年がいた。

彼の15年の人生の中で、学校に通った期間は、合計で1か月に満たない。

 

入学してから、彼の学習意欲は舌を巻くほど。

小学生程度からの漢字、文章表現、数学、社会常識、

次々とものすごい勢いでマスターしていった。

「勉強がおもしろくてしょうがなくて、眠れない」というのが悩みだったほど。

 

「ここにくる以前は、いつも人の目ばかりを気にしていた。

人と自分を比較しては、人を羨み、ため息をついていた。

ドリームプラネットで半年過ごし、

ようやく自分は自分だと思えるようになった。

そうしたら、自分にも何かできるような気がしてきた。

いまは、ジャーナリストに興味がある。

ジャーナリストという仕事をもっと知りたい。

そして、できるなら、その職業に就いて、世界中の人に会いたい。

世界で起こっていることを、この目で見て、たくさんの人に伝えたい」


「やっぱり、まわりの人がしっかりと、子どもを支えてやらないと、

心の傷って残るんです。

僕の周りの大人も、今でこそ僕のことを認めてくれるようになったけど、

小さいころは、誰も支えてくれなかったから、

今でも " 自分は学校に行けなかったんだ "

というコンプレックスに悩まされることがある」

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この子もまた、やりたいことをやらせてもらえなかった,

ということではないかと思われます。

 

さらに引用します。

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子どもの才能を見出して伸ばせば、基礎や基本は後からついてくる。

目的に向かって進むことで人格もついてくる。

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これって、やりたいことを尊重する姿勢です。

 

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「好きなことをしていい」「夢に向かって進め」

こんな言葉は耳に心地よく響く。

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言葉ならいくらでも言えます。

しかし、

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子どもたちは、前の学校でやりたくないことを押しつけられていたと、

一様に口にする。

でも、少し考えてみれば、やりたくないことは確かに存在しただろうが、

どうしてもやりたいこと、

「夢」といえるものがあったかどうかとなると心もとない。

与えられたことを拒否することはできても、

自分で本当にやりたいことは何かわかっていなかった。

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こういう状態になるのは、子どもの責任ではないでしょう。

思いっきり遊ぶ機会を与えられないから、

自分のやりたいことが湧いてこなくなってしまっている、

そう思えてしかたがありません。

 

子どもたちは、自ら成長していくのです。

そんな子どもたちを支えるのが大人のやることでしょう。

 

そんなことを改めて思っていると、出てきた言葉があります。

『Sol Cafe  幸せの栖』の出発点です。

「人間らしい豊かな人生を生きる」

それが、いま失われてしまっているのではないでしょうか。

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今晩のNHKの「ニュースウォッチ9」で、

カスハラのものすごさが報道されていました。

日本人は、いったいどうしてしまったのでしょう。

そういう社会になってしまっているというほかありません。

どういう社会かというと、多くの人が人間らしさを感じられていない、

言い方を変えると、感謝を忘れてしまっている、

そういうことなんだと思います。

そんな社会に、子どもたちは生きている、

そう見てしまうと、悲しくなります。

 

しかし、多くの人たちが、人間らしく、感謝して生きていることも、

決して忘れてはいけない、そう思って、

この寄り道から、元の散歩道に戻っていきます。