【学びの散歩道】子どもたちの将来は大丈夫なのだろうか?(20) 「ゆとり教育」②

『それでも、ゆとり教育は間違っていない』(寺脇研著 扶桑社)

では、「ゆとり教育」とは何かがよくわからなかったので、

『もう一度考えたい「ゆとり教育」の意義』(辻村哲夫・中西茂著 悠光堂)

を読んでみたのですが、こちらは素人には難しい本だったので、

いまいちよくわからないのでした。

それでも、「ゆとり教育」で何をしようとしていたのは、

どんな思いで作ったのかはわかりました。

 

平成8(1996)年に文部大臣に提出された

中央教育審議会の第一次答申を引用します。

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  • いかに社会が変化しようと適切に対応できるように自ら考え判断するなどの「生きる力」を育む。
  • 「生きる力」を育むには、時間的にも精神的にもゆとりを持った指導が必要。
  • 「生きる力」が全人的な力であることから、横断的、総合的な指導の時間の創設を提案。既存の教科書等の授業時間、教育内容を厳選することによって生み出す。
  • 「時代を超えて変わらない価値のあるもの」を大切にしつつ「時代の変化とともに変えていく必要があるもの」に適切に対応していく教室。
  • 週休五日制。ー 子どもたちの教育は、学校・家庭・地域社会がそれぞれの教育の役割を果たしながら、連携協力して当たることで、より成果を上げることができる。
  • 教育課程審議会に、教育の再編・統合を含めた将来の教科等のあり方を継続的に調査審議する常設の委員会を設ける。

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審議会の「目指すべき学校像」

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  1. 「ゆとり」のある教育環境で、「ゆとり」のある教育活動を展開する。子どもたち一人一人が大切にされ、教育は仲間と楽しく学び合い活動する中で、存在感や自己実現の喜びを実感しつつ、「生きる力」を身につけていく。
  2. 教育内容を起訴、基本に絞り、わかりやすき、学習意欲を高める指導を行って、その確実な習得に努めるとともに個性を活かした教育を重視する。
  3. 子どもたちを、一つの物差しではなく、多元的な多様な物差しで見、子どもたち一人一人の良さや、可能性を見出し、それを伸ばすという視点を従事する。
  4. 豊かな人間性を専門的な知識・技術や幅広い教養を基盤とする実践的な指導力を備えた教員によって、子どもたちに「生きる力」を育んでいく。
  5. 子どもたちにとって共に、学習する場であると同時に。共に生活する場として「ゆとり」があり、高い機能を備えた教育環境を確保する。
  6. 地域や学校、子どもたちの実態に応じ、創意工夫を活かし、特色ある教育活動を展開する。
  7. 家庭や地域社会との連携を進め、家庭や地域社会とともに子どもたちを育成する開かれた学校となる。

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これでもかというくらい「生きる力」が強調されています。

内容は素晴らしいと思います。

一つだけ、言葉の使い方に、私個人的な違和感があります。

「指導」という言葉は、「指し示して導く」と書きます。

大人の思惑で方向を示して導くのでは、子どもの主体性は育ちません。

また、「子供」とは、子どもは親の共の者という感じがして嫌なんです。

 

この答申に始まり、審議された結果として成立した

いわゆる「ゆとり教育」とはなにかを、ネットで調べてみました。

ゆとり教育とは何か?教育内容・子供の特徴・批判される理由を解説 - cocoiro career (ココイロ・キャリア)

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  1. 豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚の育成を重視すること。
  2. 多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し,子どもたちの自ら学び自ら考える力の育成を重視すること。
  3. ゆとりのある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育の充実を図ること。
  4. 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること。

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この通りにできれば、フィンランドにも負けない教育になっている、

と思いますが、学力低下で揺り戻しがありました。

あまりにも短絡的な思考でつぶされた感じです。

「ゆとり教育」が施行されて1年後のPISAの結果が悪かった原因が、

「ゆとり教育」にあったとは思えませんが、

ゆとり教育は散々たたかれたわけです。

既得権益が侵される人が多かったからかもと、勘ぐってしまいます。

 

ほんとうに子どもの将来を豊かなものにする想いを、

世間の大人やジャーナリズムが持っていたら、と思うと残念です。

しかし、その「ゆとり教育」を思い考え、実施したからからこそ、

この「令和の日本型教育」につながっているともいえるでしょう。

20210126-mxt_syoto02-000012321_1-4.pdf (mext.go.jp)

それにしても、「概要」でこれですから、全く読む気になれません。

 

こういう指針を出して、末端まで浸透できるものでしょうか?

上から下への指示、下から上への報告が大変そうです。

 

現場には、もっとシンプルに子どもたちの将来、

「生きる力」を育てることを思って、

子どもたちに向き合っている人たちがいます。

それらの人たちの根底に流れるものはみんな同じだという個ともわかります。

そういった人たちが、一人でも多く活躍できる仕組みをつくること、

それこそが大事なのではないかと、単純な私には思えてなりません。

 

上からの思考・施策は間違っていなかったと思います。

何をするのかも大事ですが、誰がどうやって実現するのか、

そこが大事なんだと思います。

 

写真に意味はありませんが、

リンクしてシェアしたときに、写真があった方が見栄えがいいので、

手元にあった写真を適当に貼っています。