【Solの徒然詩集】〈1〉木の一年

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わたしは種です。

何の種だかわかりません。

 

小さな種の私は地面に落ちて、その上に落ち葉が重なっていきます。

雨が降り、時には雪が降り、少し冷たくはありますが、

心地よい湿り気を体に感じます。

 

小さなわたしにエネルギーがみなぎり、

それが根となって、地面に潜っていきます。

頭の上は冬の寒さ、時折雪がうっすらと積もります。

その下にあるわたしは、しっかり根を伸ばし、

息をひそめて時期が来るのを待っています。

だんだん地面の上の日差しも、

柔らかく温かなものになってきました。

元気に外に出る時期がやってきました。

 

わたしは芽を出し、種ではなくなります。

地上に出て、双葉になります。

根から吸い上げられる水分と栄養で、茎がどんどん伸びていきます。

春から夏にかけて、幹から出た枝に葉っぱがいくつも生まれます。

 

やがて秋が来て冬になり、そしてまた春が巡ってきます。

それが何度か繰り返されて、小さな種だったわたしは若木となりました。

 

年を経るごとに幹は大きく太くなり、年輪を重ねていきます。

何年も何年もたって、わたしは立派な大きな木になりました。

 

そんなわたしは、今年も、毎年微妙に違う、

移り行く春・夏・秋・冬を楽しんでいます。

 

春には、枝枝の先や節々から若芽が出て、やがて花が咲きます。

遠くからは、鮮やかで、かつ、やさしく感じられる花のまとまりです。

近くで見ると、とっても可憐な、一つ一つがかわいい花花です。

 

夏になると枝葉が大きく広がり、緑の葉っぱが風にそよぎます。

根は地面いっぱいに張りめぐらされ、かなり奥深くにも達しています。

そこから吸い上げられた水分や栄養素が、幹を通って枝葉に届きます。

緑の葉っぱは満面に太陽の光を浴びて、

二酸化炭素を取りこみ、新鮮な酸素を吐き出していきます。

 

そんな命の源のようなわたしは、鳥や虫たちを引き寄せます。

たくさんの鳥や虫たちが、幹や枝はに抱かれて生活しています。

たわわな葉っぱのおかげで、地面には木陰が拡がり、

そこでは、夏の強い日差しを避けて、人々が憩いの時間を過ごしています。

 

花の後にはおいしそうな実ができています。

それを鳥たちがついばみ、リスなどの小動物が食べます。

残って落ちた実から出たり、鳥やリスなどの糞に混じって出た種は、

またどこかで芽を出し根付いていくのかもしれません。

 

そんな命が躍動する夏が過ぎ、台風がやってきました。

わたしは、強風や豪雨の体当たりを受けます。

でも、根は大地を踏みしめ、大きな幹が木全体を支え、

枝葉は無理することなくしなりながら、厳しい時間を耐え抜きます。

 

秋が深まり、涼しくなり、日が短くなってくると、

葉っぱは色づきはじめます。

まわりの木も紅葉し、その美しさが人々の目を和ませます。

そんな落ち着いた時間が過ぎていくと、しだいに寒さが増してきます。

紅葉のあと枯れた葉っぱは、風に吹かれるまま地面に降りて一休みです。

そして、何年かかけて土に帰り、栄養となって、

木というわたし自身の営みを支えるのです。

 

寒い冬は充電の時間です。

春から秋にかけて体験したことを振り返りながら、じっと瞑想しています。

寒くて震えていても、とても心は穏やかです。

 

やがてまた春がやって来る、わたしはそのことを知っていて、

自然はそれを裏切ることはないのですから。

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これを詩と呼べるかどうかわかりませんが、

詩は自由に書けばいいのでしょう。

 

講習を受けただけで何もやっていないのですが、

私は、ネイチャーゲーム・リーダーにもなっています。

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そのゲームの中に、「木の一年」「私の詩」というのがあって、

かつて、「裏山でSol Cafe」の時に、

それを試してみようと思ったことがありました。

そのために作ったのが、この詩でした。

それが残っていたので、少し手を加えて、

【詩集】の冒頭に掲載してみました。

 

これを今回やってみて気づいたことがあります。

この詩を書いたときには、いい感じでできたなと思ったものです。

でも、今回もう一度読んでみて、手を加え、さらに読んでみると、

木のことを本当に理解していなない自分に気がつきました。

上っ面じゃダメだなと思いました。

感性はもちろん大事、そして、知識や観察もおろそかにしてはいけない。

そう感じたのです。

 

詩集というからには、これを機に、

徒然に詩を書いていくということなんですね。

たぶん、きっと。