田坂広志「風の便り」第8便に、
イソップ物語の「北風と太陽」心理学版というのが紹介されていました。
北風が旅人のマントを脱がせることに失敗するところまでは、
寓話と同じなのですが、そこから先が違っています。
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そこで太陽が「私が旅人のマントを脱がせてみせましょう」といって、
旅人を歩パポカ暖めます。
すると旅人は、暑さのあまり、自然にマントを脱ぐのではなく、
太陽に向かってこう言うのです。
太陽さん。そうしてポカポカ暖めて、
私のマントを脱がそうとしているのでしょう。
でも残念ながら私はあなたの思うとおりにはなりませんよ。
この心理版イソップ物語は、我々の中に潜む
「他者を自由に操りたい」という願望や、
密やかな「操作主義」について語ったものです。
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なるほどなと思います。
その時思ったのが、「北風と太陽」のお話は知っているけど、
イソップの寓話そのものを読んだことがないな!でした。
ということで、この本を借りてみました。
丸ごと引用します。
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北風と太陽が、どちらが強いかで言い争いをした。
道行く人の服を脱がせた方を勝ちにすることにして、北風から始めた。
強く吹きつけたところ、男がしっかりと着物を押さえるので、
北風は一層勢いを強めた。
男はしかし、寒さに参れば参るほど、重ねて服を着こむばかりで、
北風もついに疲れ果て、太陽に番を譲った。
太陽は、はじめ穏やかに照りつけたが、男が余分の着物を脱ぐのを見ながら、
だんだん熱を強めていくと、
男はついに暑さに耐えかねて、傍に川の流れるのを幸い、
素っ裸になるや、水浴びをしにとんで行った。
説得が強制よりも有効なことが多いと、この話は説きあかしている。
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なぜか最後に、蛇足の解説がついています。
この寓話だけではなく、みんな蛇足がついているのです。
大きなお世話だなと思いました。
最後の解説のようなところに、こう書かれていました。
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ギリシャ語原点の校訂版が19世紀初頭以来何種類も世に現れている。
その内2番目に新しく最大の規模のもの、
ベン・エドウィン・ペリー(1892-1968)の「アエゾピカ」第一巻、
ギリシャ語寓話471、ラテン語寓話254、その他を納めている。
そのギリシャ語471話を収めたのが本書。
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そもそもイソップとは何かを、私は知らないのです。
Wikipediaによると、こうなっていました。
世にも不思議な物語です。
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ヘロドトスの『歴史』によると、
紀元前6世紀にアイソーポス(イソップ)という奴隷がいて、
話を作ったとされるが、現在イソップ寓話に含められているものの中に、
イソップ本人に由来することを実証できる作品はひとつもない。
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還暦を大きく過ぎてはじめて『北風と太陽』は何たるかを知った気がします。
Solは太陽です。
太陽のような人でありたいと思うわけですが、
その太陽は、北風と太陽の太陽ではない、そう思います。