この本、金曜日の通勤の行き帰えりと、
仕事の前後、教室に一人でいる時間に読んでも、
4分の1も読めないくらいほどでした。
昨日の土曜日は、すごい時間をかけて、半分くらいの量を読み、
今日の午前中で、残りの3割くらいを読みきりました。
文庫本ながらページ数は470ページ余りに及んでいたこともありますが、
思いのほか時間がかかったのは、内容が面白かったので、
端折ることなくしっかり読んだからだと思っています。
巻末の池上彰さんの解説から、二つほど引用します。
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大人たちが見向きもしない素朴な疑問にとりつかれた少年は、
疑問を独力で解くことにしました。
「何かを実現したいと思ったら、まずはトライしてみることだ」
これが少年の信念でした。
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電力が、開発途上国にとってどれほど大切なものか、
ウイリアム少年は、マラウィが貧困から抜け出せない理由の一つとして、
電気の欠乏を挙げています。
電気がないので、森林を伐採して燃料にする。
これをくり返していくうちに、豊富な森林は次第に姿を消していきます。
砂漠化が進みます。
木材を手に入れるためには、遠くまで行かなければなりません。
薪を手に入れるためだけに、大量お時間が消費されます。
森林が消滅したために、大雨が降ると洪水となり、土砂がダムに流れ込み、
水力発電のタービンが止まり停電が起きます。
発電所は川の浚渫をしなければならなくなりますが、費用がかかるため、
電力会社は電気料金に費用を上乗せします。
「電気はいっそう高価で庶民にな手の届かないものになる」
安価で豊富な電気があれば、こんな悪循環から脱出することができるのです。
地球温暖化を防止するために、
自然エネルギーを活用しようという主張があります。
もちろんそれも大事なことですが、自然エネルギーの利用は、
そもそも人々を貧困から救い出してくれるのです。
そのことを、ウイリアム少年は、身をもって示してくれました。
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この本には、ウイリアム・カムクワンバ少年の生い立ちが、
事細かく記されていました。
そこにあったのは、私の全く体験したことのないことばかりでした。
飢饉、飢餓、餓死、貧困、迷信、政治の腐敗、暴動、災害、伝染病、.....
一旦中学校には通ったものの、教科書も買えず、
学費も一切払えなかったので、
中学校で勉強を続けることはできませんでした。
それでも、図書室で物理学の本を見つけ、それを熱心に読むようになります。
独学で、風車をつくり発電しようと決意します。
そして、ほとんどすべてを廃品で、風力発電機を作り上げたのです。
これはある意味、奇跡とも言えます。
しかし、それは彼のたぐいまれな能力だけでできたのではないと思います。
貧しさゆえに、中学校に行けなかったことで、
家業のトウモロコシやタバコの栽培を手伝いながらも、
廃品置き場で部品を探す時間はたっぷりありました。
中学校に行っていたとしたら、
風力発電機をここまで作り上げるのはむずかしかったかもしれません。
それにもまして、一番大きなポイントは、
彼は、家族と友だちに恵まれたということだと私は思っています。
餓死するほどの飢饉のときも、家族で支え合いました。
ウイリアム少年が訳の分からないことをやり始めても、
父親はそれを認めて、好きにさせてくれました。
良かれと思わなかった母親も、温かく見守ってくれました。
家族以外の大人や、多くの友だちから馬鹿にされる中、
2-3名の友だちは、共感し、彼を信じ、協力してくれたのです。
そのおかげだと思います。