写真は特に意味はありません。
あこがれの人っていなかったよな、というのが正直なところです。
20代のころ、会社でいろんなことが目につき、
こんなことしていちゃだめだという思いがありました。
そんなころ、司馬遼太郎作『竜馬がゆく』を読み直して、
現状打破していく活力にしていました。
坂本龍馬が、その当時のあこがれの人であったともいえるでしょう。
結構独りよがりなので、そのあとは、まったくと言っていいほど、
あこがれの人と言える人は出てきませんでした。
最近、ドリームマップ授業で、
あこがれの人は誰ですかと聞かれることがあります。
その時に答えていたのが、北条早雲です。
これもまた、最近読み返した司馬遼太郎の『箱根の坂』の影響です。
なぜか?
それは北条早雲という人は、60歳になる前は無名で、
60歳を超えてから、農民・民衆のために領土を広げていき、
長生きもし、関東一円を納めて、
その後三代にわたる善政の基礎を作った人だからです。
私の還暦後の本当の人生に、勇気をもらえる存在なのです。
これを機に、北条早雲について少し調べてみました。
享年64歳説と88歳説があるようです。
64歳だと、「あこがれの人」にはならなかったでしょう。
私のあこがれの北条早雲は、
あくまでも『箱根の坂』に描かれた北条早雲なのです。
北条早雲こと伊勢新九郎の前半生にはほとんど記録がなく、
司馬遼太郎の創作で描かれています。
その前半生はさておき、興味深いのは、60歳を超えてからなのです。
- 56歳 将軍足利義尚の奉公衆となり、駿河に下り、小鹿範満を討って興国寺城主となる。
- 60歳 出家して早雲庵宗瑞を名乗る。
- 62歳 伊豆討ち入り
- 64歳 小田原城主となる
- 66歳 伊豆平定
- 85歳 相模平定
- 88歳 韮山上で死去
- 常に農民とともにあり、農民・民衆のための政治を行った。
- 七公三民、六公四民の年貢を四公六民にした。
- その後、北条氏綱、氏康、氏政の三代にわたる善政が続いた。
「あこがれの人」と「生まれ変わったらこうなりたい人」とは違うと思います。
自分の好きや、やりたいことがわかっている今、
それを生業にして活躍している人を見ると、
そういう人生を送りたいなと思うのです。
【好きをする時間】切り絵:意識的無能の段階がいい - Sol Cafe 『幸せの栖(すみか)』 (hatenablog.com)
そんな人がいました。
ここに書いた今森光彦さんです。
一方、あこがれの人は、そんな生き方をしたいなとは思わないけど、
心情的・信条的に共感できる人、それを妥協せずやり遂げる人だと思います。
北条早雲が、そんな人ですし、
最近、切り絵などをやるようになって浮かんでくるのは、
あこがれの人って、「偏屈じいさん」かなって思うのです。
自分の信念をもって、自分のやってきたことに誇りを持っている、
だから、それを外れたことには一切妥協しない、
よくある「気に入らない仕事はしない偏屈な職人気質」、
でも、本当は誠実でやさしいんです。
私がたくさんの本を読んできて、出会ったのがそんな人でした。
長年、慶大病院に勤め、退職後の今も活動を続けておられる近藤誠先生です。
近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来 (kondo-makoto.com)
最近読んだこの2冊の本、その前にも一冊読み、
この後も何冊か読んでみようと思っています。
特に、『健康診断は受けてはいけない』(2017年)は
買って手元に置き、今後も参考にしたい本です。
その本の「はじめに」に書かれていることは、
近藤誠さんをよく表しているので、抜粋要約をしてみます。
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- 2013年の全国調査で、20歳以上の健康診断受診率は62%。
- 解剖学者の養老孟子さんとの対談で聞いたのは、かつて東大病院では医師の健診診断率は4割ほどだったこと。慶大病院では、5割程度だった。
- その当時、ナースらの職員の受診率は100%だった。職員には何らかの圧力があったのではないだろうか。
- 最近、慶大病院の医師の健診受診率は、99.9%になっている。病院執行部が懲戒処分をちらつかせたから。
- なぜ100%ではないのかというと、慶大病院に40年間在職した間、近藤先生自身が、健診を受けていないから。
- 「近藤先生、健診を受けていただけませんか。役人(厚労省)がうるさいので困っています」「僕が受けないのは、好き嫌いだからではありませんよ。受けたら健康になるとか、寿命が延びるというデータがないからです。もし、健診が有効と証明されたのであれば、喜んで受けますよ。役人が来たら、そういう論文やデータを示してくださいと伝えなさい」
- 2度目の電話はなく、定年の1年前に執行部が面会を求めてきた。懲戒処分の可能性まで口にして、そういう論文はないと認めながらも、胸部のセックス線だけでいいので受けるように言ったという。結局は追い払った。
- 『患者よ、がんと闘うな』などの著作で、「がん検診も健診も有害無益」と繰り返し発言してきた自分が、その意思を曲げることはできない。
- そこ(健診を受けさせる)には、正義はなく、厚労省の権益が絡んでいる。
- 実際、海外では健診はやっていないし、前立腺がんや乳がんの検診は推奨しないと政府の機関が明言までしている。
- 全がん死亡率が減少する中で、検診発見がんの死亡率が上昇している。
- 実際、検診を受けたがために早死にする人は数かぎりなく存在している。
- 有名人を見ても、歌舞伎役者の中村勘三郎、坂東三津五郎、作家の渡辺淳一、棋士の米永邦夫、大相撲の千代の富士(先代九重親方)、女優の川島なお美さんらは、人間ドックでがんが発見されたために命を縮めた。人間ドックを受けなければ、このうち数名は今も活躍されていたことでしょう。
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がんというものについて、多くの人が、
ある種の正しくない思い込みをしていると感じているなかで、
近藤先生によって、がんとはどういうものかが少しわかった気がします。
世の中の仕組みは、本当に必要としている人のためになっていないんです。
オリパラも、競技者と運営側との間に、
同じ精神とは思われない大きな隔たりを感じます。
北条早雲の時代もそうですが、いつも置き去りにされるのは民衆です。
新型コロナウイルスによって、いろんなおぞましい事柄が、
浮き彫りにされてきました。
その支えとなっている医療の素晴らしさの裏にあるもの、
私にはおぞましいと感じられることがたくさんあります。
健康診断が病人を作る、薬漬けの医療、老衰と病気を混同させる、
望まない危機や不安をあおる、........
その裏には、利権や儲け主義が見え隠れします。
そんな中に身を置いた近藤先生の軸がぶれないあり方にあこがれを感じます。