この本(写真)に、ある調査で出た結果が示されていた。
「自分のことが好きか?」
- 小学5年生 半数以上が「好き」 1割未満が「嫌い」
- 中学3年生 3割程度が「好き」 2割程度が「嫌い」
「自分に満足か?」
- 小学5年生 半数以上が「満足」 1割未満が「不満」
- 中学3年生 2割程度が「満足」 半数近くが「不満」
この本は、2015年6月が初版なのでそんなに古くないだけに、
この結果は、にわかに信じがたい。
私がドリームマップ授業で小中学校に行くようになったのが、2017年の晩秋。
これまで、多くの小中学校に行き、たくさんの主に小学4年生、6年生、
中学1年生の「自分のことどれだけ好き?」のコップの水の量を見てきた。
いつも感じるのは、子どもたちのコップの水があまりにも少ないということ。
それからすると、「自分が好きではない」小中学生の子どもたちが、
もっともっとだくさんいる、というのが肌で感じていること。
それはさておき、著者はこう続けている。
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ただ何となく生きてきたのが児童期だとすると、
青年期になると「こうありたい自分」というものを意識するようになる。
それを「理想自己」という。
現実の自分を「現実自己」という。
児童期には、現実自己をただひたすら生きていた。
ところが、青年期になると、現実自己というものを思い描くようになり、
理想自己にまだ届かない現実の自分を意識せざるを得ないため、
自分に満足しにくくなるというわけだ。
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人とつい比べてしまうということについては、
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自分の劣ることがあっても落ち込まないようにすることが大事なのであって、
人と比べること自体が悪いわけではない。
なにしろ、「自分らしくあればいい」なんて言われても、
人と比べないと、自分の特徴が浮かび上がってこないのだから。
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この本に「自分らしさ」の答えはない。
題名の問いに向き合って考えてもらうために書いたと著者はいう。
ただ、考えているだけでは、何も生まれないようである。
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「どこかにほんとうの自分があるはず」というのは間違いだ。
自分というのは「今、ここ」にいる自分しかない。
自分探しの物語に安住している限り、今の自分は変わらないのだから、
永遠に納得のいく生活なんて手に入らない。
今ここで新たな一歩を踏み出さないかぎり、
自分の生活に変化の風を巻き起こすことはできない。
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「育自のための小さな魔法」では、
メガネをかけ替えて、思い込みを外そうというワークをする。
思い込みは「セルフイメージ(自己概念)」
それは、自分の頭の中で形作られた自己のイメージであり、
過去に人から言われたことによってつくられてきたものである。
だから、それは、本当の自分とは違うかもしれないということ。
この本にも、それは、自己イメージとして書かている。
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僕たちが自分に対して持つイメージは、
もともとは他者がこちらに対して抱いたイメージである。
人から言われた言葉や人から示された態度をもとに、
自己イメージがつくられている。
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これが、「自己は他者である」ということなのである。
- 「自分は何があっても前向きで、笑顔で頑張っていけるタイプの人間だ」
- 「自分は神経質で、慎重なのは良いかもしれないが、どうも細かなことにとらわれすぎる」
- 「自分は人の気持ちがよくわかるやさしい性格だ」
これらの自己イメージの例では、
親や先生や友だちからかけられた言葉が示されている。
それをみて、親や関わる他者がかける言葉の大切さを改めて感じた。
「自己は他者である」というのは、日本人の特徴的なことでもあり、
それは、共感力を生んでいるようなのだ。
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日本人にとっては、コミュニケーションの最も重要な役割は、
お互いの気持ちを結び付け、良好な場の雰囲気を醸し出すことなのだ。
強烈な自己主張によって相手を説き伏せることではない。
だから、自己主張のスキルを磨かずに育つことになる。
自己主張が苦手なのは当然だ。
その代わりに相手の気持ちを察する共感性を磨いて育つため、
相手の意向や気持ちを汲み取ることができる。
相手の気持ちを汲み取って動くというのは、
日本人の行動原理といってもいい。
コミュニケーションの場面だけではない。
たとえば何かを頑張るとき、
ひたすら自分のためというのが欧米式だとすると、
日本人は、だれかのためという思いが割と大きい。
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これからは、日本人の時代だといわれることが多い。
欧米人の、相手を説得し自分の意見を通すというコミュニケーションでは、
もうなりゆかなくなっているし、
また、自分のために頑張るより、
誰かのために頑張るやり方が求められる時代だということだろう。
ただ、何事もいき過ぎてはいけない。
親のために受験を頑張るということには、ちょっと無理がある。
だれかのためが、結果として自分のためになるような生き方が必要であろう。
そして大切なのは、欧米人には希薄だといわれる共感力である。
この本を読んで、そんなことが浮かんでくる一方、
このコロナ禍、緊急事態宣言下にある日本人の思考や行動・態度、
特に若者の行動のニュースを見るにつけ、
はたして大丈夫かという危惧もないわけではない。
一方、すごく志の高い若者たちを何人も知っている。
世の中、格差時代で、なんだか、若者も二極化しているようである。
そこに不満を持ってもなにもならない。
希望をもって、自分を律して、自分のできることをやっていくだけだね。