認知症に学ぶこと⑥ SOLの場合

母を見ていると、認知症にならない方法が、独断と偏見ですが、見えてきます。

そこに行きつくまでは、母のことに再度触れる必要があります。

ここまで書いていいんだろうか?

という気持ちはありますが、認知症を正しく理解することの大切さを、

クリスティーンの本を読んだりして感じています。

私が書くことは、正しいかどうかはわかりませんが、

母のことについては、できるだけ事実に基づいて書いておこうと思いました。

 

そんな母は今日、無事退院しました。

豪雨災害のあった広島・岩国間のJR山陽本線は、

昨日まで止まっていたようで、今日から再開しています。

会社も臨時休業しているところが多いようです。

 

今日は妹夫婦が、フルに面倒を見て、グループホームに連れて行ってくれました。

担当医から、「がんではない」とはっきり言われたそうです。

それでも腫瘍はあるので、これからどうするのかが気になりますが、

どうも様子見のようです。

次の健診は、なんと、ほぼ3か月先の10月4日。

 

母からは、毎日電話があります。

土曜日は朝から夕方まで、電車に乗って出かけ、

ワークショップや会議があったので、電源を切っていました。

夕方、ケータイの電源を入れると、19件の留守電が入っていました。

そして昨日の日曜日は、午前中5回くらい話したのに、

午後用事で出ていると、夕方までに20件の留守電が入っていました。

唖然としますが、分けもわからず寝ていることを思えば、……

それにしても、すごい行動力と継続力です。

 

その内容は、毎回ほぼ同じで、あるパターンの繰り返しです。

母は、自分の現実が理解できません。

グループ・ホームに入っていることはわかっています。

そして、今日までは、病院に入院していることもわかっていました。

しかし、なぜ、グループホームに入っているのか、

なぜ、病院に入院しているのかは理解できていません。

膝が痛くて、歩けない、

そのことだけは、ものすごく気になっています。

 

母から、何百回も聞かれてきたのは、

・住んでいた家はどうなったか

・家にあった着るものなどはどうなったか

・財布はどこへいった

・保険証がない

・キャッシュカードもない

ほとんどこれです。

何度も丁寧に教えているし、そのときには納得するのですが、

数分すればもう忘れています。

 

膀胱に腫瘍があって、ここ国立医療センターで、

検査のための手術をして、月曜日に退院する。

娘(妹)が当日は来て、支払いもして、グループホームに連れていく。

このことは何度説明したかわかりませんが、記憶からなくなってしまっています。

 

そして毎日のように、

・今どこにいるのか(手術したことも覚えていない)

・いつ退院するのか

・財布も保険証もない

・払うお金がない

・退院したらどこに行くのか

・グループ・ホームに連絡しないといけない

・妹は、退院するのを知っているのか

……

 

住んでいた家はきれいにして返し、中のものも処分した、

今の自分の家はグループホームで、そこでずっと暮らしていく。

このことは、最近やっと飲み込めてきたかなという感じです。

それは、そのグループホームが居心地がいいからでもあるのでしょう。

 

母は、ずっと一人でお店を切り盛りしてきました。

おばあちゃんやお父さんの介護もしてきました。

痛い膝を引きずりながら。

おしゃべり好きで、お店を切り盛りするというより、

お店に来る人、近所の人の世話を焼いてきました。

 

お店を閉じざるを得なくなった理由は、認知症が一番ではありますが、

お金が回らなくなったのも、大きな要因です。

売るよりあげる方が多いので、年金をお店につぎ込み、

妹が管理して、なんとか自転車操業をしていたのでした。

 

・自分で何でもできる、

・みんなの世話は、自分がやっている

・世話されたことはない

母には、そんな自負がありました。

だから最後まで、売り物を人にあげることは、

収まることはありませんでした。

 

認知症で、昔やっていたことができなくなっても、

財布とお金とキャッシュカードは、自分で管理するものでした。

お店がはやっていた時には、

やりがいをもって毎日忙しくしていました。

しかし、高齢化で地域はどんどん寂れていき、

お客は日を追うごとに減っていきました。

 

一日の大半を一人ぼっちでいると、

・客が来ない

・売り上げが減った

・仕入れのお金がない

・人がいなくなって、なんとつまらない町になったことか

・膝が痛い

・なんでこんな膝になってしまったのか

・ボケないためにもお店は続けないといけない

 

毎日、母の日記には、そんなことばかり書かれていました。

たまに会ったときに愚痴は訊いていましたが、

これを読んで、日々のストレスはここまでだったのかと、

思い知らされる感じでした。

 

子どもが大きくなり、孫も成人してからは、

お店が母にとっては、唯一の生きがいであり、楽しみでした。

お店を休むわけにいかないと、旅行にもほとんど行ったことがありません。

料理は好きでしたが、とりたてて趣味もありません。

そんな母が、生きがいであるお店の切り盛りに対して、

やらなければいけない、けどうまくいかない、

愚痴ばかりの出る時期が長くなってしまったのでした。

 

もし母が、普通の主婦で、家事をやりながら、花を育てたり、

自分の趣味をやったり、たまには旅行に行ったり、

そんな中での人付き合いをしていたら、

状況は違っていたのかもしれないな、と思えて仕方がありません。

 

そんな中で認知症を発症し、短期記憶がなくなる中、

自分の自負はずっと根強く残っている、

今の母を見ているとそんな感じがします。

 

認知症になった母については、簡単ではないけれど、

本人の尊厳を認めながら、やさしく接していくほかありません。

もう少し早く気づいて、何とかすべきだったと思うだけに余計です。

 

そういう私自身は、認知症に対してどうしたらいいでしょうか?

 

母を見ていて思うのは、狭い範囲にとどまらないでおこう、ということです。

あることができなくなったら、ほかに何もない、

そんな状態は、普通に考えてもよくないと思われます。

幅ひろくやりたいことがあり、出かけるところがある、そこには仲間がいる、

そうすることが、認知症にならないための最大のポイントだと思います。

そんな生活だと、ネガティブなストレスはほとんどないでしょう。

もう一つは、生活習慣病にならない食生活と適度な運動ですね。

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