認知症は治らない、改善しない、
それは誰かが決めつけたこと。
対応の仕方によっては、改善する場合がある、
そんな事例があります。
それを実証する例が、
『ルポ 希望の人びと』(生井久美子)に書かれています。
いちばん顕著な例が、すでに引用したクリスティーン、その人です。
科学的には、ありえない状態で、しっかり自分の人生を生きています。
そのほか、こんな例もありました。
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付き添いの松本みよこさんは、
二郎さんの病棟を歩き回る理由が、苗をまくことだと気がついた。
何度も笑顔で話しかけて、いっしょに歩くと2か月後、
険しかった顔がおだやかになった。
看護師さんが、「同じ徘徊でも、連れがいると違うんだね」と驚いた。
4か月後、うなるだけだった二郎さんに言葉が戻り、
ある朝、「世話になるなぁ」と言った。
本人の視点に立って接すれば、「絶望的」と専門医に見放された人も変わる。
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私も身近に、こんな話を聞きました。
お母さんが認知症になって、支援している女性がいます。
お父さんも健在ですが、お母さんは、お父さんが認識できなくて、
変なおじさんがいると言っていたようです。
ある時彼女は決めました。
お母さんの言動を否定することなく、
徹底して受け止めて、ポジティブに返そうと。
それを続けていると、
お母さんが、お父さん、すなわち自分の夫を、
夫と認識できるようになったそうです。
ここには共通することが、あるように思えます。
この本で、いちばん印象にの残った二つの言葉があります。
「認知症の人のデイケアは簡単ですよ。やさしくすればいいんだから」
「認知症の人はこれはできない、と勝手に決めつけないでほしい。
生き生きと暮らすためにはどうするか、支える側の力量が問われる」