5/23の「さまざまな君たちがいる」に書いたように、
前回の最高の居場所で持ち寄ったそれぞれのおススメ本、
聞いたその本の題名をメモしていました。
それを片っ端から図書館で予約すると、
一気にたくさんの本が届きました。
それをごっそり持って、帰省の途についています。
その一つが、この本です。
誰のおススメか、忘れました。
フィンランドでのロケ滞在期間中の体験をつづった
エッセイのようなものです。
ちなみに、”マトカ”とは、フィンランド語で旅のこと。
空いた新幹線の中で、ゆっくりした時間がとれたので、
響いたところを書き留めてみました。
現代日本人は、もっと人間らしく
ゆっくりした生活を考えてもいい時期に来ている
そう思えます。
そう言っている自分が
一番せっかちなんですけどね。
それでも、この歳になって
ずいぶん待てるようになってきました。
------------------------------------------------------------------------------
日本のカメラマンは、なぜいつも怒っているのだろう。
なぜみんな、苦虫を噛み潰してみたいな顔で働くんだろう。
どうして照明さんは、タメ口で話す人が多いんだろう。
助監督の靴下は、どうしていつも臭いんだろう。
こひつじたちを観察するように、狼の生態も観察したら、
愉快なことをたくさん発見した。
------------------------------------------------------------------------------
もしかすると、私が小銭を数える時間は、
自分で感じるより長かったのかもしれない。
フィンランドでは、スーパーのレジでも、トラムの乗車口でも、
扱いなれないコインを数えるのにいくら時間をかけても、
一回も、誰にもせかされることはなかった。
そんな気配を感じたこともなかった。
知らない間に、わたしもそれに呼吸を合わせていたのだろう。
最初のころ、キオスキなどでレジの並び方がわからずに、
知らないうちに行列に割り込んでいたことがしょっちゅうあった。
並び直そうとするわたしに、
心優しきフィンランド人たちはいつも、
いいよ、いいよ、どうぞお先におやんなさい、
笑顔で譲ってくれたものだ。
-----------------------------------------------------------------------------------
結局、予定時間を30分、予定料金を1500円超過して、
タクシーは友人たちが待ちわびる家についた。
しかし、この時も、私の中にはまだ女神の気持ちが残っていたのだ。
いつもかかる料金だけ払ってください、と小声て言う運転手に、
黙って1000円を渡し、おとなしくドアを閉めた。
しかたがないのだ、道を知らなかったのだから。
躍起になってわたしが責めなくても、
きっと次には、乗客の伝えた道をきちんと確認しようとするだろう。
-----------------------------------------------------------------------------------------
フィンランドに行く少し前に撮っていた映画では、
撮影終了が30時半なんて言うことがよくあった。
朝の6時半のことである。
もちろん10時間休むなんてとんでもない、
午前中から、また28時くらいまできっちり働かされるのだ。
でも、それは日本では珍しいことではない。
フィンランドの雇用法では、
労働時間によってきちんと時給が計算の仕方が決められている。
基本は8時間労働だが、それを過ぎるとその基本の時給の何割、
という形で超過料金が設定されている。
さらに10時間を超えると、またそれ以上となるわけだ。
しかも、土曜日と日曜日に働くと基本の時給の倍!もらえるらしい。
だから、ロケの場所がどうしても土曜や日曜しか使えない、
というような場合以外は、
ほとんど週休2日のゴージャスな撮影スケジュールになる。
そんなことなら土日に働いたら得じゃない、とわたしなら思う。
だが彼らは、それとこれとは別、ときっぱりと言う。
-------------------------------------------------------------------------------------