日本理科学工業訪問に思うこと

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今日の帰省の新幹線・在来線の中で、一昨日購入したこの2冊の本を読みました。


日本理科学工業、ある意味、会社の実態とマッチしていない不思議な名前だなと思っていたのですが、大山泰弘会長のお父さんが、どうしてこのような名前を付けたのかは、会長自身も知らないということが本に書かれていました。そこには、お父様の将来に対する夢があったような気がします。

 

その夢と今の会社のあり方も、また一致していない、そんな気がしています。会社名ではわからない、世界でも例を見ない独特な温かさのある会社だからです。

 

じゅんちゃんの第3回大人の遠足で、一昨日の4月10日に訪問した日本理科学工業は、チョークのメーカーです。その時の様子は、Facebookに書いています。

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人体に害のない炭酸カルシウムでできたダストレスチョークで、日本のチョークのトップメーカーというだけでなく、法政大学の坂本光司教授の『日本でいちばん大切にしたい会社』のトップに出てくるこの会社は、従業員85人のうち、63名が知的障がい者。そのうち26名が重度の障がい者という会社です。

 

大山隆久社長のお話を伺い、工場見学をさせていただきました。
その中で、響いたことがたくさんあります。


・障がい者がいないと、この会社は成り立たない。
・社会貢献しているとは一切思っていない。
・チョークをつくるためには、知的障がい者の能力が必要。
・だから、2週間のお試し体験を2-3回、面接をやって会社の仕事にマッチした人を採用している。
・障がい者雇用に関する法改正で、大企業がごっそり採用するので、日本理科学工業の新規雇用は厳しくなっている。特にここ数年、女性をほとんど採用できていない。
・働く障がいのある人は、自分にできることを受け持って職人として働き、仕事は彼らに任されている。
・辞める人はほとんどいなくて、毎日休まず働き続けてくれる。定年退職まで。

 

そんな世界にも例のない会社が、川崎市に存在しています。

 

大山社長のお話だけでは分からない部分が、大山会長の本を読んでわかりました。
知的障害のある人たちを雇うということは、並大抵のことではありません。
工場見学のときにイキイキ働いている人たちを見たのですが、ここまで来るには、それこそ並大抵ではないことがたくさんあったのです。

 

大山会長は、「会社は人に幸せをもたらす場」である必要があると言われています。
それは、ほめられること、役に立つこと、必要とされることが、働くということで満たされるからです。

そのためには、ただやさしいというだけでなく、厳しさも必要だったということが、本を読んでよくわかりました。一人ひとりと真摯に接するだけでなく、そこで働く人たちのことにも配慮しなければ、成り立つことではありません。それは、誰にもできることではないと思います。だからこそ、日本でいちばん大切にしたい会社の代表的な会社なんです。

 

大人の遠足の第1回、第2回で訪問した伊那食品工業と重なります。
業態も違い、実際まったく違う会社ですが、根底に流れるものは塚越寛会長の『年輪経営』の精神に通じると感じています。経営者に、私利私欲が全くないんです。

 

大山泰弘会長が提唱する『皆働社会』 - 五方(国、企業、障がい者、家族、福祉施設)一両得の社会つくり -   それは、私にはそんなに難しいことではないと思われます。国にメリットがあることなので、やりましょうと言えば済むことです。しかし、まだ実現していません。純粋でかつ合理的なことが、やればできることが、すんなりできない、変に複雑な既得権益の時代にあるからなのでしょう。

 

話がとっても遠回りしましたが、今回の日本理科学工業の訪問で一番感銘を受けた言葉は、大山社長のこの言葉です。

 

「キットパスを世界のブランドにしたい」

 

これは、ごく普通の会社が口にする、「日本一になる」「世界トップブランドになる」というのとは全く違います。

 

そこには、私情が全く感じられないのです。
日本理科学工業や、大山社長が有名になりたいということではなく、そこには純粋な思いが感じられました。

 

純粋に「楽書き文化」を世界に広めたい、そういう想いだけなんです。


・絵はヘタでも、塗り絵などで楽しむことができます。
・絵を描きはじめたら楽しくなります。
・ヘタな絵でも、恥ずかしくないという自分が好きになれます。
・そんな大人がいれば、子どもが安心します。
・絵を描くということは、創造力をひろげます。

 

世界中の人がキットパスで「楽書き」をやったらどうなるでしょう。
世界中の人が幸せになり、世界が平和になるでしょう。

 

こんな会社が、実際にあります。
応援したくなりますよね。